2023 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of Methods for Carbon-Fluorine Bond Activation Utilizing Fluorine Elimination
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21K05066
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Research Institution | Sagami Chemical Research Institute |
Principal Investigator |
藤田 健志 公益財団法人相模中央化学研究所, その他部局等, 主任研究員 (60603066)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 有機合成化学 / フッ素 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素-フッ素結合は安定な結合であるため、これを切断しながら化学変換を行うのは困難とされてきた。これに対して、金属を用いるフッ素脱離に注目し、穏和な反応条件下でのC-F結合活性化法を開発した。 まず、次世代冷媒として利用が始まっているハイドロフルオロオレフィン(HFO)を出発物質として用い、含フッ素置換基を有するヘテロ環化合物の合成に成功した。鈴木-宮浦カップリングと分子内付加-脱離における最適条件を見出し、医農薬に有望な含フッ素ヘテロ環化合物を合成した。HFO-1234zeの臭素化および脱臭化水素によって2-ブロモ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製し、スルホンアミド基を有するボロン酸エステルとの鈴木-宮浦カップリングを行ったところ、カップリングに続いて脱フッ素環化が一挙に起こり、3-(トリフルオロメチル)インドールが高収率で得られた。 さらに、入手容易な2-フルオロベンゾフランの穏和な条件下での脱フッ素カップリングを達成した。ニッケル触媒存在下、2-フルオロベンゾフランに対してアリールボロン酸を作用させたところ、室温で反応が進行し、2-アリールベンゾフランが高収率で得られた。反応機構を実験的に検討した結果、室温という穏和な条件で反応が進行する理由として、炭素-フッ素結合の切断がニッケルによる酸化的付加ではなく、ニッケラシクロプロパンを中間体とするβ-フッ素脱離で起こっているためと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題として当初提案した大きく分けて3つの課題のうち、「金属を用いるβ-およびα-フッ素脱離や酸を用いるHF脱離の新規活用法」について、論文1件を報告できた。しかし、病気で休職していたため、もう少しで投稿できそうな論文を完成できていない。したがって本研究はやや遅れているが、体調が回復したため、2024年度に巻き返したい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、(i) β-およびα-フッ素脱離や酸を用いたHF脱離の新規活用法、とともに、(ii) 遠隔位フッ素脱離、(iii) フッ素脱離を経由したフッ素転位、といった炭素-フッ素結合活性化の新手法の開発を目指している。(i)についてはさらに幅広い反応の開発を行いながら、論文の完成を目指す。(ii), (iii)についてはさらなる展開を目指す。
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Causes of Carryover |
2023年度の後半は病気療養のため休職していたので、本研究は2024年度に延長して継続する。研究費の繰越額は、実験に必要な器具、試薬類といった消耗品や、成果発表に必要な旅費などに使用する予定である。
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