2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K05067
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
戸田 泰徳 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (60758978)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ホスホニウムイリド / 可視光レドックス触媒 / 有機分子触媒 / ラジカル反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホスホニウムイリドの触媒能開拓は、新規有機分子触媒の開発という観点だけでなく、イリドの化学に関する研究という観点からも意義深い。本研究では、ホスホニウムイリドの触媒能開拓の一環として、可視光レドックス触媒としての利用を目的に研究を行った。前年度は、トリクロロアセトニトリルを電子アクセプターとする光誘起電子移動反応において、ホスホニウムイリドの光化学特性を明らかにした。 そこで本年度は、研究計画に従い、ホスホニウムイリドの酸化的消光を起点とする可視光レドックス触媒の機構に基づき、ホスホニウムイリドおよび電子アクセプターのスクリーニングを中心に様々な反応開発を行った。 レドックス活性エステルであるイミド化剤を用いる芳香族化合物のC-Hイミド化反応においては、ホスホニウムイリドのオルト位とパラ位にtBu基を導入した場合に触媒活性の向上が認められた。これに関しては、サイクリックボルタンメトリー測定の結果から、ホスホニウムイリドから生じるラジカルカチオンの安定性がtBu基の立体効果によって向上するという知見を得ることができた。 電子アクセプターに関しては、イミド化剤やトリフルオロメチル化剤だけでなく、四塩化炭素や四臭化炭素からも対応するトリハロメチルラジカルを発生させることができ、不飽和カルボン酸を基質として用いると、アルケンへのラジカル付加を経由してラクトン化反応が進行することを明らかにした。 さらに、イミド化剤と4-フェニル-4-ペンテン酸の反応を検討した結果、ホスホニウムイリド触媒存在下および可視光照射下、ベンゼン環のC-Hイミド化反応よりもイミドラクトン化反応が優先して進行することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホスホニウムイリド可視光レドックス触媒を用いる芳香族化合物ならびにヘテロ芳香族化合物のC-Hイミド化反応で得られた知見を、トリハロメチルラクトン化反応やイミドラクトン化反応に応用することに成功した。これらの研究成果は論文として報告する段階まで到達している。また、ホスホニウムイリドの特長である強い還元力を活かすことができる反応開発についても予備的な知見が得られており、本研究の発展が期待される。よって、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を通して、ホスホニウムイリドが強い還元力をもつ可視光レドックス触媒として機能することを明らかにした。今後の研究では、反応性が低い反応剤を用いる反応探索を予定している。また、ホスホニウムイリドと他の触媒を組み合わせたハイブリッド触媒系についても検討する予定である。引き続き、ホスホニウムイリドの可視光レドックス触媒反応としての固有の反応性を調べる。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)蛍光消光実験に当初の計画以上の時間を要したため、第51回複素環化学討論会での発表を延期した。第53回中部化学関係学協会支部連合秋季大会は愛知工業大学で開催される予定であったが、オンラインでの開催に変更されたため、旅費に余剰分が生じた。 (次年度における使用計画)第52回複素環化学討論会において研究成果を発表する予定であり、未使用分はその参加費と旅費にあてる。
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Research Products
(5 results)