2022 Fiscal Year Research-status Report
高活性・高選択的な遷移金属触媒反応を実現するジホスフェン配位子の開発
Project/Area Number |
21K05071
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
津留崎 陽大 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (40623848)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジホスフェン / 遷移金属錯体 / 触媒反応 / 1,1’-ビナフチル / テルアリール / リン / 金 |
Outline of Annual Research Achievements |
すでに1,1’-ビナフチル基と2,4,6-トリ-t-ブチルフェニル基(Mes*基)を有するジホスフェン-金(I)錯体の合成に成功するとともに、この錯体がアリールブチニルエーテルの分子内ヒドロアリール化反応に対する触媒として利用可能であることを明らかにしている。本年度は、高活性なジホスフェン配位子の開発を目指して、Mes*基のかわりに電子的・立体的に異なるテルアリール基を有するビナフチルジホスフェン1およびその金錯体の合成を検討した。 ジホスフェン1はこれまでと同様の手法により合成した。ジホスフェン1に対して1当量のAuCl(tht)を作用させたところ、対応する金(I)錯体2が得られた。ESI-MSスペクトルの結果から、ジホスフェンと金の1:1錯体が形成していることが分かった。錯体2の31P NMRスペクトルでは、102.6, 5.1 ppmにダブレットシグナル(J = 356 Hz)を与え、η2配位していることが示唆された。これは、η1配位した既知の金(I)錯体 (405.9, 315.7 ppm; J = 535 Hz)とは対照的な結果である。次に、得られた金(I)錯体2を用いて、「1,6-エンインの環化異性化反応」、「アルキンを有するジアリールスルフィドの分子内ヒドロアリール化反応」、「アルキニルアルケノンとジフェニルイソベンゾフランの環化付加反応」の3種類の触媒反応へと適用した。いずれも目的とする反応が進行し、ジホスフェン錯体に適用可能な基質の拡大に成功した。また、光学活性なジホスフェン錯体を用いたところ、11%eeで環化付加反応が進行することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たにテルアリール基を有するジホスフェン配位子の開発に成功し、Mes*基とは異なる配位挙動を示すことを明らかにした。また、ジホスフェン-金(I)錯体を用いて新たに3種類の触媒反応に適用可能であることを見出した。これらの研究成果は本研究の目的と合致し、おおむね計画どおりであることから、上記の自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、新たな配位子合成や錯形成反応を実施する。また、これまでに合成した配位子・錯体を用いた触媒反応開発を通じて、他の配位子とは異なる選択性・活性を示す反応も開拓する。
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