2022 Fiscal Year Research-status Report
金属ラジカル一電子還元反応を基盤とする生物活性天然物の合成研究
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21K05078
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
高取 和彦 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (30231393)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ラジカル反応 / 環拡大反応 / 転位反応 / Diels-Alder反応 / テルペン / トリキナン / ブリアラン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は次の2点について重点的に検討した。 1)一電子還元を起点とする環拡大1,2-転位反応、酸化的アリル転位反応の繰返しによる5員環伸長戦略を用いた抗菌活性化合物ヒプノフィリン合成法の開発 1-(5-アルコキシペンテニル)エタノンとアレンとの光[2+2]付加環化でメチレンシクロブタン環を構築し、ヨウ化サマリウムによるカルボニル基の一電子還元に付したところ、環拡大1,2-転位が進行し、ジキナン構造を構築することができた。酸化的アリル転位後、アレンの付加環化で得たアルデヒドを二度目の環拡大1,2-転位に付したが、転位せずに別の箇所の結合が切断されて、5/7員環システムが生成してしまった。そこでホルミル基をメシルオキシ基にメチレンシクロブタンをシクロブタノン構造に変換して一電子還元に付したところ、ノルジメチルトリキナン骨格を構築することができた。 2) 一電子還元を起点とする5員環形成と環開裂反応を駆使したブリアラン類の合成研究 遠隔不斉制御分子内Diels-Alder反応による合成ルートでは、環化付加体のアセトニドを加水分解して得た1,2-ジオールの位置選択的アシル化を検討した。DCCによるカルボン酸との縮合では位置選択的なアシル化ができず、更に精製段階でアシル基が目的としていないヒドロキシ基上に完全に転位してしまった。そこで、ジオールからモノシリル化、ヒドロキシ基の酸化、シリル基の除去、生じたアルコールのアシル化でα-アシルケトンを合成した。これを塩基処理して5員環ラクトンへ導こうとしたところ、10員環が渡環的分子内アルドール縮合を起こしてしまい、デカリン環が生成してしまった。今後、一電子還元を起点とする方法でも5員環ラクトン形成を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) 一電子還元を起点とする環拡大1,2-転位反応、酸的アリル転位反応の繰返しによる5員環伸長戦略を用いた抗菌活性化合物ヒプノフィリン合成法の開発:ヒプノフィリンの11位に相当する炭素原子にジメチル基を導入した基質での検討は難航している。ジメチル基を導入するとアレンの光環化付加の立体選択性が落ちてしまった。ジメチル基の代わりにスピロシクロプロパン環を導入したところ、光環化の選択性は比較的良かったものの、環拡大転位反応の収率が大幅に落ちてしまった。一方、ジメチル基を備えたジキナンは別法のビスα,β―不飽和エステルの一電子還元による還元的環化―Deckmann縮合で行えた。 2) 一電子還元を起点とする環拡大1,2-転位と連続環化反応を駆使したカウラン類の合成研究:15-オキソゾアパトリンの合成は完了した。論文作成のために足りないデータを取得している。 3) 一電子還元を起点とする連続環化反応とラジカル環開裂反応を駆使したアンセリジオーゲンAnの合成研究:冒頭の連続Michael-アルキル化反応の二つの原料の安定性に問題があった。β-ケトエステルはα位にブロモ化すると扱い易くなった。今回、Michael受容体をオキサゾリジノンアミドに変更したところ安定性を向上させられた。これらのLiBr処理で連続Michael-アルキル化反応の再現性は更に向上した。 4) 一電子還元を起点とする5員環形成と環開裂反応を駆使したブリアラン類の合成研究: 遠隔不斉制御分子内Diels-Alder反応による合成ルートでは、上述のように5員環ラクトン形成の段階に取り組んでいる。もう一つの三環性化合物からの環切断による合成ルートでは、三環性化合物までの合成が完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 一電子還元を起点とする環拡大1,2-転位反応、酸的アリル転位反応の繰返しによる5員環伸長戦略を用いた抗菌活性化合物ヒプノフィリン合成法の開発:ビスα,β―不飽和エステルのSmI2による連続環化反応で得たジキナンをアリルアルコールへ誘導する必要がある。その点を検討し、上述の合成ルートに接続してトリキナン骨格を構築する。 2) 一電子還元を起点とする環拡大1,2-転位と連続環化反応を駆使したカウラン類の合成研究:合成した15-オキソゾアパトリンの生物活性試験を検討する。 3) 一電子還元を起点とする連続環化反応とラジカル環開裂反応を駆使したアンセリジオーゲンAnの合成研究:連続Michael-アルキル化反応で得たトリシクロ環に、連続環化反応に必要な二つの側鎖を立体選択的に導入する。また、連続Michael-アルキル化反応で光学活性体が合成できるか検討する。 4) 一電子還元を起点とする5員環形成と環開裂反応を駆使したブリアラン類の合成研究: 遠隔不斉制御分子内Diels-Aler反応による合成ルートでは、14位にシアノ基が導入された前駆体のDA反応とシアノ基から酸素官能基への変換、および、ラクトン部形成を引き続き検討する。二度のDiels-Alder反応による三環性中間体の合成とその環開裂-ラクトン形成による合成では、三環性中間体の環開裂による10員環形成を目指す。
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Research Products
(2 results)