2021 Fiscal Year Research-status Report
水中で機能する新奇なルテニウム錯体の合成と触媒反応への応用
Project/Area Number |
21K05081
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
大江 洋平 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (20512734)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ルテニウム / 金属錯体界面活性剤 / 触媒反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
親水的な金属イオンと疎水的な配位子で構成され,両親媒性を示す金属錯体界面活性剤は,水中での触媒作用をはじめとする多様な用途が期待される.そのため,さまざまな金属錯体界面活性剤の合成,水中での機能などが研究されてきている.一方,ルテニウム錯体は,炭素環,リン,または窒素配位子などの多彩な配位子との錯体形成や錯体の有用性が示されており,有機合成反応の触媒や材料等に利用されている.そのような幅広い利用の可能性があるにもかかわらず,これまでルテニウム錯体界面活性剤の研究はビピリジン(またはフェナントロリン)配位子を主たる配位子としたものに限定され,その用途も汎用性に欠けている.そこで,本研究では,高い汎用性が期待される長鎖アルキル基をもつ炭素環を配位子とするルテニウム錯体の合成とその利用に取り組んでいる.初年度となる今年度は,広く錯体前駆体として利用されいている[(p-cymene)RuCl2]2錯体のp-cymene配位子を長鎖アルキル基が置換した芳香環を配位子に置き換えた新規ダイマー型錯体を合成し,そこから種々の錯体合成へと展開した.C12の直鎖アルキル基をもつベンゼン誘導体を購入または合成し,AnらのAmmonia-Free条件でのBirch還元(OL 2018)により対応するジエンを合成した.得られたジエンを三塩化ルテニウム水和物と反応させたところ,目的の[(C12H25-arene)RuCl2]2錯体(arene = phenyl, p-tolyl, 3,5-xylyl, pentamethylphenyl)が得られた.得られた錯体は,ホスフィン,ホスファイト,窒素系配位子などの様々な配位子と反応し,対応するピアノ椅子型錯体を与えた.TSDPENとareneが3,5-xylylの錯体から得られた錯体は水中での水素移動型還元を効率的に進行し,高いエナンチオ選択性が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り,さまざまな検討を行う基礎となる汎用性の高い錯体の合成経路を確立することができた.また,これらの結果については,一部学会にて発表することができ(第102日本化学会春季年会他),論文も投稿準備段階にある。さらに,水素移動型還元反応だけでなく,異性化反応などの触媒反応への展開にも着手することができ,次年度以降の研究へスムーズに移行できる研究基盤を形成することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた上記の研究結果に立脚し、次年度はルテニウム界面活性剤の汎用性を示す研究に注力する。具体的には、 1)不斉水素移動型還元反応における長鎖アルキル基の効果を明らかにする 2)本研究で得られた錯体の水中での触媒反応への応用 を重点的に行う。 一方、長鎖アルキル基をもつCp環配位子をもつ錯体については現在も合成方法を含めて検討中であり、その合成法および利用法については継続して検討していく。
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