2022 Fiscal Year Research-status Report
カルボラジカル種の光化学的形成を鍵とする革新的CO2有効資源化反応の開発
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21K05083
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
松本 剛 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所, 研究職員 (40564109)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | CO2 / 芳香族炭化水素 / 光反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会の持続的発展のため、従来の多段階加熱・冷却過程を伴うエネルギー多消費型プロセスから脱却した、新しい省エネルギー型基礎化学品生産プロセスの創出が重要である。特に、持続的社会発展を見据えた低炭素社会実現のためには、「I. 省エネルギー性」に加えて、地殻上に豊富に存在する「II. CO2等の安定小分子の有効活用」、および化学品合成に際する還元剤や強塩基等の添加剤の併用を前提としない「III. 高い原子効率」、をそれぞれ満たす反応プロセス開発が極めて重要である。光化学反応が本来有する省エネルギー性と負荷即応性を活かしつつ、原子効率高く CO2 を変換し得る反応系を実現するためには、反応基質の直接光励起により生ずるラジカル活性種とCO2との反応場設計が有望と申請者は考える。 本提案では、CO2共存環境下において光化学的に発生させた活性ラジカル種を鍵中間体とすることで、犠牲還元剤や塩基の併用を必要とせず、温和な温度条件下で進行させることが可能なCO2の新しい資源化反応を開拓することを目的とする。特に、既に先行研究で得られた二置換芳香族炭化水素の犠牲還元剤および塩基フリーな光カルボキシル化に関する知見(Sci. Rep. 2018, 8, 14623., J. Org. Chem. 2021, 86, 959.)に基づき、各種一置換芳香族炭化水素とCO2との光反応性における二置換芳香族炭化水素との差異を見出し、一置換芳香族炭化水素特有のCO2との新しい反応を開拓する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
種々の一置換芳香族炭化水素のCO2共存下での光反応を検討した結果、類似の二置換芳香族化合物の場合とは対照的に、芳香環炭素上ではなく置換基元素上にてCO2との反応が進行したことを示す予備的結果が得られた。これは、置換基数の違いに由来する光反応のラジカル中間体上でのスピン密度分布の違いを反映したものであると考えられた。 続いて、本光反応における添加剤効果の検証を行った結果、いくつかのアルミノシリケート型ゼオライトを共存させた場合に、反応効率が向上する傾向が見られた。以上の結果は、ゼオライト材料が光反応を促進させる機能を持つことを示唆する結果である。また同時に、今後、ゼオライト材料の構造と組成を種々変調することにより、さらなる反応効率の向上の余地があることを示唆する結果である。 一方、添加剤に用いる材料探索を進める中で、ゼオライト同様に代表的な多孔性材料の一つであるポーラスカーボン材料が、CO2同様に有望なC1炭素源の一つとして考えられているメタノールと、一置換芳香族化合物(2-フェニルエタノール)間での炭素ー炭素結合形成における触媒機能を発現することを見出した。本反応は既知反応ではあるものの、本反応におけるカーボン材料の細孔特性が反応性に及ぼす顕著な影響に関して明らかにすることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの研究により、芳香環炭素上にてCO2との反応が進行する二置換芳香族化合物の場合とは対照的な一置換芳香族化合物の反応性(置換基上でのCO2との反応)を確認することに成功した。また、添加剤としてアルミノシリケート型ゼオライトを共存させた場合に、光の遮光・散乱の影響にも関わらず、光反応が促進されることを示す予備的結果が得られた。最終年度である本年度は、ゼオライト添加剤の反応促進効果の詳細について明らかにし、さらに反応効率の向上を図る目的で、添加するゼオライトの細孔特性や酸性質・酸量が光反応性に及ぼす影響について詳しく調査する。さらに、顕著な反応促進効果が認められたゼオライトに関しては、反応前後での状態変化についても詳しく調査を行い、反応促進効果の実態や再利用性についても検証を行う。
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Causes of Carryover |
研究代表者は、2022年11月末にそれまでの所属期間であった東京工業大学を退職し、12月1日付で現所属である北海道立総合研究機構に着任した。異動後は、物品の移設、設置、動作確認、等の作業と、異動に伴う種々の事務手続きのため、研究計画を約3ヶ月間ほど先送りせざるを得ない状況におかれた。研究計画変更に伴い、2022年度に配分した研究費の内、122,713円を2023年度使用額とすることとした。前述の通り、この金額は先送りした約3ヶ月分の研究に支出する予定であったため、2023年度6月中に執行完了する予定である。
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