2021 Fiscal Year Research-status Report
Atomic-scale analysis of the ordering of strongly correlated electrons in perovskite-type oxides
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21K05092
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
長井 拓郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 技術開発・共用部門, 主幹エンジニア (90531567)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 軌道秩序 / 角度分解EELS / 透過型電子顕微鏡 / 球面収差補正 |
Outline of Annual Research Achievements |
二次元的電気伝導性を有する強相関電子系物質として代表的なK2NiF4型層状マンガン酸化物Nd1-xSr1+xMnO4の低温で形成される軌道秩序相について、電子自由度の秩序状態を実空間で解析することを試みた。バルク試料を切断、機械研磨した後、Arイオンミリング法により薄膜化して電顕観察用試料を作製した。この電顕観察用試料について室温においてTEM観察および制限視野電子回折測定を実施した後、プローブ形成用球面収差補正装置を用いた高角度環状暗視野STEM (HAADF-STEM)法により、この試料における金属原子コラムの実空間観察が可能であることを確認した。次に、液体窒素冷却二軸傾斜試料ホルダーを用いて透過型電子顕微鏡の鏡筒内で試料を冷却し、冷却温度を保持した状態で観察を行った。100K付近の温度領域においては、組成xにより異なる二つの軌道秩序相、反強的軌道秩序相(電荷軌道秩序相)および強的軌道秩序相が形成されることが確認できた。これらの低温軌道秩序相についてTEM観察および制限視野電子回折測定を実施することにより、MnO6八面体のヤーンテラー変形を解析した。これにより強的軌道秩序相におけるドメインの軌道配列パターンを同定し、同一の軌道配列を有する単一ドメイン(軌道秩序ドメイン)を透過した電子波について、EELS検出器に入射する散乱波の方向を変えながら角度分解EELS分析を行った。また、プローブ形成用球面収差補正装置により、ペロブスカイト型酸化物を構成する酸素原子コラムを環状明視野STEM (ABF-STEM)法を用いて実空間観察できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
K2NiF4型層状マンガン酸化物Nd1-xSr1+xMnO4の構成原子について、プローブ形成用球面収差補正装置を用いたHAADF-STEM法により原子分解能観察が可能であることが確認された。また、ペロブスカイト型酸化物を構成する酸素原子をABF-STEM法により原子分解能観察することに成功した。さらに、低温電子回折法により層状マンガン酸化物Nd1-xSr1+xMnO4の強的軌道秩序相におけるドメインの軌道配列パターンを解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
214型層状マンガン酸化物R1-xA1+xMnO4及び113型ペロブスカイト型マンガン酸化物R1-xAxMnO3(R:希土類元素、A:アルカリ土類金属元素)の軌道秩序相におけるヤーンテラー変形、軌道の配列パターンを原子分解能ABF-STEM法、STEM-EELS法、角度分解EELS法により実空間観察し、解明することを試みる。また、スピンの超高分解能実空間観察のために、高分解能ローレンツ顕微鏡法を用いた実験条件の最適化を行う。
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Causes of Carryover |
電顕試料作製のためのFIB用消耗品(マイクロサンプリングプローブ、イオンソース)に使用可能な予備があり購入しなかったため、次年度使用額が生じた。 論文校閲に係る費用及び論文投稿費として使用する計画である。
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