2022 Fiscal Year Research-status Report
Atomic-scale analysis of the ordering of strongly correlated electrons in perovskite-type oxides
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21K05092
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
長井 拓郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 技術開発・共用部門, 主幹エンジニア (90531567)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ローレンツ顕微鏡法 / 球面収差補正 / 軌道秩序 / 角度分解EELS |
Outline of Annual Research Achievements |
実空間におけるスピンのアトムスケール観察を目的として、イメージコレクターを用いた高分解能ローレンツ電子顕微鏡法の最適化を図った。電子線単色化モノクロメータを用いて、光学系の条件を最適化することにより、ヘリカル反強磁性を発現する標準物質(希土類金属ホルミウム)において、1.0nm離れた反転する磁気モーメントを分離して実空間観察することに成功した。また、軌道のアトムスケール観察を目的として、ペロブスカイト関連層状構造をもつマンガン酸化物Nd1-xSr1+xMnO4 (0.5≦x≦0.82)について、TEM観察、電子回折測定、STEM観察およびEELS分析を行った。まず、室温における明視野像観察、高分解能像観察および電子回折測定により、試料の構造は共通して正方晶I4/mmmであり、欠陥構造を含まないことを確認した。また、イオンミリング法で作製した電顕観察用試料についてプローブコレクターを用いた高角度環状暗視野 (HAADF)ーSTEM法により、金属原子コラムを直接観察した。次に、液体窒素冷却試料ホルダーを用いて温度を変化させながら明視野像観察および電子回折測定を行い、この系の低温電子相を確認した。x=0.67および0.75では電荷軌道秩序相(反強的軌道秩序相)、x=0.80では電荷軌道秩序相および強的軌道秩序相、x=0.82では強的軌道秩序相をそれぞれ確認した。x=0.80では、温度低下に伴う、電荷軌道秩序相(高温相)から強的軌道秩序相(低温相)への相転移を確認した。さらに、局所領域の電子回折パターンを観察し解析することにより、強的軌道秩序相において出現するバンド状分域(軌道秩序ドメイン)における軌道配列パターンを同定した。それぞれの強的軌道秩序ドメインをSTEM-EELS法を用いて角度分解EELS測定を行い、軌道パターンとEELSスペクトルの相関を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イメージコレクターとモノクロメータを用いた高分解能ローレンツ電子顕微鏡法の最適化により、磁気空間分解能1.0nmを達成した。 また、低温におけるTEM、STEM、電子回折によりペロブスカイト関連層状マンガン酸化物Nd1-xSr1+xMnO4 (0.5≦x≦0.82)の低温電子相を確認し、強的軌道秩序相におけるドメインの軌道配列パターンを解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
214型層状マンガン酸化物R1-xA1+xMnO4及び113型ペロブスカイト型マンガン酸化物R1-xAxMnO3(R:希土類元素、A:アルカリ土類金属元素)の強的軌道秩序相および反強的軌道秩序相におけるヤーンテラー変形、軌道・電荷の配列パターンを原子分解能ABF-STEM法、STEM-EELS法、角度分解EELS法により実空間観察し、解明することを試みる。また、これらのスピン構造を高分解能ローレンツ電子顕微鏡法により実空間観察する。
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Causes of Carryover |
試料作製のための高純度試薬、および、FIB用消耗品(マイクロサンプリングプローブ、イオンソース)に使用可能な予備があり購入しなかったため、次年度使用額が生じた。論文校閲に係る費用及び論文投稿費として使用する計画である。
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