2021 Fiscal Year Research-status Report
層状ナノ粒子と白金錯体との複合化が可能とする超高効率発光材料
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21K05094
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 将己 北海道大学, 理学研究院, 助教 (20712293)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 錯体化学 / 発光材料 / 刺激応答性材料 / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、次世代の省エネルギー型光デバイスやセンサー材料等への応用を見据え、発光性有機金属錯体と無機ナノ材料との複合化に基づく光機能材料の開発を目標としている。具体的には、固体状態では優れた発光性を示すものの溶液中で発光性が低下する白金(II)錯体を層状複水酸化物(LDH)ナノ粒子と複合化することで強発光性や新奇な光機能性を開拓する。 本年度はまず、目的とする材料の開発を目指し、種々の白金(II)錯体のLDHナノ粒子への担持方法の確立を試みた。その結果、申請時点で担持に成功していた2-phenylpyridinate(ppy)配位子を有する錯体に加え、さらに2種の白金(II)錯体をLDHナノ粒子へと安定に担持することに成功した。 さらに本年度は、LDHナノ粒子上に担持された錯体どうしの相互作用を外部刺激によって制御することにも成功した。具体的には、錯体担持LDHナノ粒子を真空乾燥すると錯体間に相互作用のない緑色発光を示したのに対し、これを水蒸気曝露すると錯体の集積に由来するオレンジ色発光へと変化した。このように、本年度はLDHナノ粒子を舞台とした新奇な分子集積制御も見出した。なお、これらの成果は研究協力者である学生が日本化学会の第11回CSJ化学フェスタ2021にて発表し発信するとともに、錯体化学のみならずナノ粒子を専門とする研究者とも議論を行った。 以上のように、2021年度は目的通りLDHナノ粒子に発光性白金(II)錯体を担持する方法を確立するとともに、それら担持された錯体を外部刺激によって制御する方法を発見し、新奇な光材料を開発するための興味深い知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度までに、発光性白金(II)錯体の担持方法の確立(申請書内・研究A)ならびに外部刺激による錯体間相互作用の変調(申請書内・研究B)に成功している。これらを詳細に解析していくことにより、LDHナノ粒子を舞台とした高効率発光の発現や発光性センシングの発現などの新奇な光機能性の開拓へとつながることが期待される。以上のように、本研究は目的とするLDHナノ粒子が可能とする光機能性の発現に向けて順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前項までに述べたように、これまでの研究で白金(II)錯体をLDHナノ粒子に担持する方法を確立し、また水蒸気曝露によってその集積状態を変化させることに成功してきた。そこで2022年度は、まずはその刺激応答挙動の詳細な解明に取り組む。具体的には、水蒸気吸着等温線測定や示差走査熱量測定、様々な相対湿度下における粉末X線回折測定などに基づき、吸着された水分子の状態が錯体の集積状態に及ぼす影響を詳細に解明する。また、併せて温度可変発光寿命測定により、水蒸気下および乾燥下における励起状態についてより詳細に検討する。一方、2022年度からはLDHナノ粒子への不純物金属イオンのドープによる機能化(申請書内・研究C)についても取り組んでいきたい。 これらの結果を通じて、層状ナノ粒子LDHを舞台とした新奇な光機能材料の設計・物性制御の指針を得る礎としたい。
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Causes of Carryover |
本年度は、目的とするLDHへの錯体担持方法の検討が当初予定していたよりもスムーズに進めることができ、また刺激応答性についてもスムーズに発見することができた。そのため、実験条件検討等のための消耗品の費用を節約できた。また、学生とともに参加予定であった国際学会・国内学会がすべてオンライン開催となったことで、計上していた旅費を大幅に節約できた。 2022年度以降の使用計画としては、前項までに記載しているように2022年度は物性解析に注力する予定のため、高純度溶媒や高純度ガス、液体ヘリウム等の測定用消耗品・物品等を購入するために使用する予定である。また、2022年度からは学会が順次現地開催へと移行されることが予想されるため、研究成果を学会発表するための旅費としても使用する予定である。
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Research Products
(17 results)