2021 Fiscal Year Research-status Report
含ケイ素二重結合化合物と遷移金属の複合化によるルイス酸・塩基反応場の構築
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21K05095
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
岡崎 雅明 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (20292203)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 俊 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (20733132)
是永 敏伸 岩手大学, 理工学部, 教授 (70335579)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | シランチオン / シライミン / 元素化学 / 有機金属化学 / ルイス酸触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機分子触媒では、主要族元素が活性点となり、遷移金属錯体触媒では遷移金属が活性点となり、触媒反応が進行する。本研究では遷移金属と主要族元素化合物を複合化することで、ルイス酸・ルイス塩基反応場の構築と触媒反応への展開を最終目標とする。今年度はまず、主要族元素化合物としてケイ素を含むシランチオンおよびシライミンを取り上げた。イリジウムにside-on型でシランチオンが配位した錯体にtBuNCを反応させることで、ケイ素を配位原子としてη1型で配位した錯体が得られることを既に報告している。本反応の反応機構を解明することを目的として、様々な置換基をもつイソシアニド類との反応を系統的に調査したところ、いずれにおいても類似構造を有する錯体が得られ、分光学的データに基づき、構造決定を行った。一方、ホスフィン、一酸化炭素をはじめとする種々の二電子供与配位子との反応は、いずれも進行せず、目的とする錯体は生成しなかった。反応機構の解明には至らなかったが、本反応が進行するためには、電子供与性が高く、金属近傍で立体反発を生じない配位子が必要不可欠であることがわかった。また、シライミンが後周期遷移金属であるルテニウム二核に架橋配位した錯体の反応性についても検討を行った。ルイス酸としてBF3のエーテル錯体を反応させたところ、シライミン部位が脱離し、トルエンが2つのルテニウムを架橋配位した錯体が生成し、その構造を単結晶X線構造解析により明らかにした。ケイ素および窒素含有化合物のキャラクタリゼーションには至っていない。架橋シライミン部位の性質を理解する上で、本研究成果は重要であり、今後は反応機構の解明に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の途中で、現有設備である質量分析計のターボポンプが故障し、予定外の経費が発生したため、科研費の前倒し支払請求を行わせていただき、対応した。本分析機器は、新規化合物の構造決定において欠くことのできない機器であり、一時的に研究実施において支障をきたしたが、円滑に修理を行うことができ、実験研究の停滞は最小限に抑えることができたといえる。令和3年度中に、反応場として想定している後周期遷移金属を中心金属とするシランチオン錯体およびシライミン錯体の反応性を含む性質を解明することができ、概ね順調に進展しているといえる。特にシライミン架橋ルテニウム2核錯体における反応様式は新規性が高く、シライミンを反応活性点とする研究へと繋げていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、貴金属を用いて実験研究を行っているが、貴金属の価格が国際的に飛躍的に上昇しており、今後は実験のスケールを小さくするなど、対策を行っていく必要がある。また、貴金属に限らず、クラーク数の小さい安価な金属を用いた系への展開についても、検討をはじめていく予定である。また、シライミン、シランチオンが配位した後期遷移金属の合成例が我々の例を含めて、極めて少なく、今後研究を発展させていくためには、これら化合物の系統的合成法の確立が必須であり、本研究でも取り組んでいきたい。
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Causes of Carryover |
今年度,質量分析計の修理が発生し,当初想定していなかった支出が生じ,20万円の前倒し請求を行わせていただいた。購入する溶媒の種類を見直すなど支出を見直すことで,215,785円の残額が生じた。現在,本研究で用いる貴金属をはじめとして,溶媒類を含めて消耗品の価格が高騰しており,主に実験研究に必要な消耗品費に残額を充当する計画である。
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Research Products
(7 results)
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[Book] Organometallic Chemistry2021
Author(s)
Y. Kawano, J. Koe, H. Matsuzaki, T. Mizuta, H. Nakazawa, M. Okazaki, K. Osakada, K. Ueno, edited by H. Nakazawa and J. Koe
Total Pages
283
Publisher
Royal society of chemmistry
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