2021 Fiscal Year Research-status Report
高感度表面増強旋光度計測法の開発と分子異性化のin situ可視化への応用
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21K05106
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
高瀬 舞 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20631972)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 局在表面プラズモン / キラル分子 / 旋光度計測 / 微量分析 / 金属コロイド / 光強電場 |
Outline of Annual Research Achievements |
光学活性物質は, 特に創薬学に代表される生体内で機能する物質に多く存在し, その光学異性体はそれぞれ異なる機能を有することも多い. 特に, 生体内で機能する場合に重要となるのが異性体の一方が善として, もう一方が悪として機能する場合は, 光学分割を徹底的に行うかもしくは合成の段階で完全に片方だけを合成する必要がある. しかし, いずれの場合においても1%以下の含有物質が影響を与える場合もあることから, 分ける, 分けて作ったとしてもかなり高感度で微量の悪な光学異性体を見つけ出す必要がある. そこで本研究では, 金属に吸着した分子がその影響を強くうける表面プラズモン共鳴に起因する強電場をもちいることにより, より高感度で勘弁な表面増強旋光度計測法を開発することを目的とした. 金および銀微粒子をもちいることにより非常に強い表面プラズモン電場をつくり, この強電場と分子が相互作用する, すなわち光と分子の相互作用を長時間化することによって,旋光度を増強して高感度に検出することができると考えた. まず, 理論限界と言われている7桁以上の電場増強を獲得するため, 金および銀の微粒子の合成を行った. 非常に強いプラズモン共鳴効果を得るには二次元に規則的に配列していることなどが重要であるが, 非常に簡便なクエン酸還元法において, 両金属のコロイド粒子を得ることができた. また,このコロイド粒子を均一に基板上に塗布したり, あるいは非常に小さい微粒子を凝集させることによって単粒子では得られない電場を得た. さらに, これら貴金属溶液に光学活性な分子を溶解させて旋光度計測を行うと, 物質固有のモル旋光度と比較して大きな旋光度が得られることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
分子と光の相互作用をする場として, プラズモン共鳴現象が強く生じることが知られている金および銀の微粒子の合成を行った. すでに多くの研究がなされているクエン酸還元法をもちい, クエン酸を還元および保護剤とすることで高い安定性を有する金属微粒子を合成した. 微粒子の大きさや形を制御することでより強い光電場を得るため, 還元剤としてクエン酸をもちいると同時に保護剤としてポリマーや他の多価カルボン酸をもちいることで異なる貴金属微粒子を得ることができた. これらの貴金属微粒子は, サイズや凝集度合い, その密度などを制御することによって強い光電場となり, その制御が可能であることが明らかとなった. 当初計画においては, この時点で光電場と分子の相互作用を創出するにあたり, 貴金属表面近傍に分子を存在させる必要があることから, そのシステムを構築する予定であった. しかし, 金属コロイド溶液中に光学活性な分子を溶解させて旋光度測定を行ったところ, 比旋光度から決まる旋光度をはるかに超えた値を示した. すなわち, 溶液中に存在する分子が貴金属コロイド近傍にある場合にはその強電電場の影響を受けて旋光度を増大させることが明らかとなった. また, この時測定された旋光度は, 溶液濃度に対して線形性を有しなかった. これに対して, コロイド溶液の濃度に対しては, 線形性を有していた. しかし, コロイドの調整条件に依存して, この線形性は大きなエラーバーを有することから貴金属微粒子の表面および二次粒子の形状が大きく依存するものと考えている. 結果, 当初予定よりも簡単な系において表面増強旋光度の測定が可能であることが明らかとなり, SPRアクティブ, 非アクティブな波長におけるこの効果について検討を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画の2年目の通り, 表面プラズモン共鳴の影響について検討を行う. 旋光度計測をしながら, 系中に表面プラズモン共鳴波長の光を照射する等を行って実験をする. これによって, どのような光に対してより応答するのか, 表面プラズモン共鳴がどのように関与しているのかについて検討を行うことができる. 初年度に明らかとなった形状や凝集の度合いによる旋光度の増強率の変化についてより詳細に検討を行う. そのためには, 貴金属コロイドをガラス基板上などに塗布することによって, 規則的な構造を作ることが重要である. スピンコートやディップコートなどこれまでの知見から様々な方法で試みる. さらに, 還元剤と保護剤について, 前述した表面プラズモン共鳴への影響やその寄与を確認しながら, 種々の多価カルボン酸だけでなく, チオール基を有するシステインを始めとして種々のアミノ酸分子をこれらに応用していることを検討する. これにより表面の状態をより微細に制御することが可能となる. これらのことから, そのメカニズムの解明にむけて研究を遂行する.
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Research Products
(6 results)