2021 Fiscal Year Research-status Report
単一微粒子計測法による細孔内物質移動とクロマトグラフィーによる分離過程の解明
Project/Area Number |
21K05107
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中谷 清治 筑波大学, 数理物質系, 教授 (00250415)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細孔内拡散 / 物質移動 / 多孔性粒子 / 顕微分析 / クロマトグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
多孔質粒子/溶液系の化学プロセスは,粒子外溶液-粒子表面間の物質移動,粒子表面で細孔から出入りする過程,粒子内での細孔内拡散,細孔壁での吸着・脱着等が含まれており,機構解析には速度論的研究が不可欠である。本研究は,単一微粒子マニピュレーション法と顕微分析法を組み合わせた手法で,溶液中に単一多孔質粒子が存在する系で粒子外物質移動を単純化し,アセトニトリル-水混合溶媒等で低分子のODS-シリカゲル系での物質移動過程を,また,多点吸脱着を伴う高分子の細孔内拡散過程や高分子/細孔サイズ比の効果を明らかにし,細孔内物質移動とクロマトグラフィーによる分離過程との関係を解明することを目的とした。 アセトニトリル-水混合溶媒系でクマリン102が分配平衡に達した直径~3マイクロメートル, 細孔直径12ナノメートルの単一ODSシリカゲル粒子を,マイクロ流路セルに入れ,密封できるようにした。このセルを用いることで揮発性溶媒での実験が可能となり,実用的に逆相クロマトグラフィーでよく用いられるアセトニトリル-水混合溶媒系で検討が可能となった。マルチチャンネル光検出器をレーザー捕捉-顕微システムに導入し,マイクロ流路セル中で,単一ODSシリカゲル粒子を1064 nmレーザー光で捕捉し,408 nmレーザー光を用いてクマリン102を退色させ,周囲の溶液から単一ODSシリカゲル粒子にクマリン102が再分配する過程を,高感度に顕微蛍光分析できるようにした。クマリン102の再分配速度測定から,アセトニトリル混合比率が増加すると粒子内拡散係数が増加し,細孔内物質移動は,ポア拡散及び表面拡散の両者が関与することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,マイクロ流路セルを利用することで,逆相クロマトグラフィーでよく用いられる揮発性溶媒であるアセトニトリルと水の混合溶媒系で,単一微粒子系の計測を可能とした。一定温度条件下で,細孔内物質移動過程のアセトニトリル混合比率依存性を明らかにしつつある。研究全体としては,おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
セルを密閉できるようになったことから,今後,多孔性粒子/溶液系における細孔内物質移動過程の温度効果測定を可能とする。また,低分子だけでなく,高分子を用いる物質移動過程の研究に着手する。これらの結果をもとに,多孔性粒子/溶液系における細孔内での表面拡散とポア拡散等の関係を解明していく。さらに,細孔内物質移動過程とクロマトグラフィーとの関係を議論していく。
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