2023 Fiscal Year Annual Research Report
イオン液体生成を利用する化学物質の高速抽出分離法の創成
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21K05119
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
茶山 健二 甲南大学, 理工学部, 教授 (10188493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩月 聡史 甲南大学, 理工学部, 教授 (80373033)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イオン液体 / カチオン水溶液 / アニオン水溶液 / 溶解度積 / 抽出デバイス / 3DCAD / 3Dプリンタ / リン酸イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
サンプル水溶液中でイオン液体構成成分であるカチオン水溶液及びアニオン水溶液を加え、その溶解度積を超えて生成するイオン液体中に目的成分を抽出する手法が、通常の抽出に必要とされる振とうを必要とするまでもなく、迅速に抽出できる原理について、抽出平衡論的な考察を重ね、解明するに至った。一方、この原理を利用し、遠心分離の操作のみにより、カチオン、アニオンをサンプル中に送液するデバイスを考案し、これを3DCADにより、設計したのち、3Dプリンタにより、立体成型(印刷)し、各サンプル、カチオン、アニオン溶液貯留部、反応層、イオン液体貯留槽を形成した。生成するイオン液体は、3Dプリンタで作成する樹脂状デバイスを溶かすことがないことを確認し、これを用いて、デバイスをフィルムでシールし、数百prmで回転することにより、送液を行い、デバイス中でイオン液体生成反応を可能とした。デバイスには、分液ロートあるいは遠沈管に相当する抽出ポートを4~16ポート装備し、一枚のデバイス中で、多数のサンプルの抽出が行えるよう設計した。このデバイスを利用して、環境試料中のリン酸イオンをモリブドリン酸へと反応させ、呈色した青色のリン酸イオンを分光光度法により定量することを試みた。吸光光度法への応用は、まだ完成していないが、抽出後の写真の画像から、イメージJという、アプリケーションソフトを利用して、検量線を作成、未知濃度のリン酸イオンの定量を達成した。このように、従来のガラス器具で構成される抽出装置を用いず、蒸気圧がほとんどないイオン液体をデバイス中で生成させ、一度に多くのサンプルを抽出濃縮することに成功した例は、世界でも例を見ない。この方法は、リン酸イオンの定量だけでなく、法科学的応用として、尿中の大麻代謝物の濃縮定量にも成功しており、今後の発展が注目される。
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