2022 Fiscal Year Research-status Report
Heプラズマを用いる水素燃料ガス中ホルムアルデヒドの高感度分析システムの開発
Project/Area Number |
21K05134
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
千葉 光一 関西学院大学, 生命環境学部, 教授 (20281066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡林 識起 関西学院大学, 生命環境学部, 講師 (40737227)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水素燃料 / 不純物分析 / プラズマ分光分析 / Heプラズマ / 微量元素分析 / イオウ / ハロゲン元素 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室では、これまでに、マイクロホローカソード放電Heプラズマ (MHCD-He Plasma) を励起源とする分析システムを開発し、水素燃料ガス中イオウを高感度に測定できることを明らかにしてきた。本研究では、Heプラズマとしてマイクロホローカソード放電と誘電体バリア放電を利用する水素燃料ガス中のホルムアルデヒドの高感度分析システムの開発について検討する。本年度は、両プラズマの光源としての特性を比較検討した。特に、誘電体バリア放電は通常の交流電源を用いて放電させることができることから、60 Hz (or 50 Hz) での高い繰り返し条件での発光測定が可能であり、測光頻度の増加による測定感度の向上が期待できる。 外径と内径、電極間距離を変化させて誘電体バリア放電管を試作して、それぞれプラズマガス流量を変化させながら、発光強度と測光システム特性を検討した。典型的なキャピラリー型放電管(内径0.3 mm)と通常型放電管(内径4.0 mm)を比較すると、キャピラリー型放電管の方が感度的に優位であった。しかしながら、キャピラリー型放電管は熱耐性が低く、高い電圧を掛けすぎると溶断しやすいことも明らかになった。また、プラズマ測光面が小さくなり、光学系の調整も難しくなることも明らかになった。一方、マイクロホローカソード放電では、内径0.8 mmの放電管を用いて放電電圧 300 V、放電周波数 30 Hz、Heガス流量 50 mL/minの測定条件において最小検出量が0.45 nL となり、0.46 Lの水素ガスを分析試料として測定することで、当該水素ガス中ホルムアルデヒドが規制値 0.01 ppm 以下であるかどうかを判定することが可能である。来年度以降は、キャピラリー型放電管の冷却や光学系の安定化なども検討して、高感度かつ安定な測光システムの開発を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水素ガス中非金属元素不純物(イオウ、ホルムアルデヒドなど)の高感度分析における励起源として、Heプラズマの有効性を示した。特に、マイクロホローカソード放電Heプラズマと誘電体バリア放電Heプラズマが実用的に有効な励起源であり、水素燃料ガスのISO規格が定める規制値への整合性を十分に評価するだけの感度を有することを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従って研究を進める。 キャピラリー型放電管システムは高感度測定が期待される反面、プラズマ自体の熱によりキャピラリー管が損傷し易い。そこで、キャピラリーを冷却して溶断を防止するためのシステムを検討する。具体的には、適切な空冷ファンを取り付けて効率的にプラズマの熱を冷却するシステム、あるいは、熱伝導率のよい架台にキャピラリーを設置して効率的にプラズマの熱を放熱するシステムを検討する。また、キャピラリー型放電管は光軸調整に手間がかかり、測光位置の再現性にも難しさがあることから、当該架台にはキャピラリー型放電管の測光位置の安定化にも寄与するような設計と配置を検討する。 これまでの検討から、イオウとホルムアルデヒドを液体窒素で濃縮してHeプラズマに導入し、イオウと炭素を分光的に分離することによりの両者の同時測定が可能なことを示した。一方、水素ガス中にはホルムアルデヒド以外にも炭化水素が含まれていることがある。そこで、水素ガス中バックグラウンド炭素シグナルについて検討し、バックルラウンド炭素シグナルとホルムアルデヒドシグナルを効率的に分離するためのクライオ濃縮分離条件を検討する。これにより、ホルムアルデヒドの測定精度の向上を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度はコロナ禍の影響で学会出張を見合わせたために次年度使用額が生じた。次年度はこの予算をマイクロホローカソード放電および誘電体バリア放電のプラズマガス費用の一部として使用する。
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