2021 Fiscal Year Research-status Report
Structural analysis of potassium ions adsorbed on platinum electrodes by using grazing incidence neutron beam
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21K05137
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Research Institution | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発 |
Principal Investigator |
水沢 多鶴子 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 研究員 (90624536)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 界面 / 元素分析 / 中性子 / 全反射 / ガンマ線分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
電解質水溶液中に存在するナトリウム、カリウム等の軽金属イオンは電気二重層に吸着し、電荷移動反応や拡散過程に影響を及ぼす。電極反応を制御するためにはこれら軽元素イオンの吸着構造及びその変化を理解する必要がある。界面の元素分析には全反射蛍光X線法(TXRF)が使われるが、固液界面に存在する軽元素イオンについては信号となる蛍光X線の減衰が大きいため適用することは困難である。そこで透過能の高い中性子をプローブとした界面分析法TN-γ法(Total reflection neutron induced Gamma spectroscopy)を提案する。全反射条件では中性子線は固液界面に容易に到達するが基板内部に侵入しない。中性子線と電極表面近傍の吸着種と核反応によって生じたγ線は界面から脱出して検出器に到達する。中性子線の入射角を変化させることにより界面での侵入深さを制御し、γ線強度から吸着種の分布を調べる。TN-γ法は電極/電解質界面だけでなく、バイオマテリアルなどの深く埋もれた界面の軽元素の分析に広く応用できる。 実験は研究用原子炉JRR-3において実施する。電気化学セルに試料となる白金薄膜を硫酸カリウムの電解質水溶液と共に封止する。試料電極の中性子反射率とγ線スペクトルを同時測定し、カリウムのγ線強度から吸着位置や分布を解析する。この実験では中性子線は波長0.2nmに単色化し通常の即発γ線に比較して小さなビームで微弱な信号を扱う。バックグラウンドを低減し、γ線の検出効率の高い測定が必要である。 本研究は3年間で実施する。1年目で単色中性子線を用いたTN-γの測定手法を確立する。薄膜、多層膜などの試料を用いて測定条件を確定する。2年目と3年目で電極/電解質溶液界面吸着層の分析を行う。中性子実験だけでなく電気化学測定など実験室での検討を期間中継続して行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題の最も重要な要素であるγ線検出器については原子力研究開発機構の研究協力者(g日本原子力研究開発機構 山﨑 大博士)から借りることができた。そのため、検出器の購入を待たずに検出器の位置調整や遮蔽等実験配置について検討を始めることができた。2021年度に供用開始したJRR-3にTN-γの実験提案を申請し課題採択された。2021年7月に最初の実験をMUSASIでバルク試料の試験測定を行ったところ予想よりもバックグラウンドが高く、ビーム発散も顕著であった。これを抑えるためには装置担当者の協力を仰ぎ、装置の設置位置の遮蔽を含め大規模な改造をする必要がある。装置改造を具体化するためJRR-3での斜入射実験の基本的な特性を抑えておく必要がある。 昨年までJ-PARC物質・生命科学実験施設BL10でTN-γの予備実験行っており、白色パルス中性子を利用したTN-γ法の実験条件が確立しつつあった。そこで本手法の早期の確立を目指してJ-PARCへ申請課題を行った。遮蔽の強化や新しいγ線検出器の取り付け等の改造を行い、2021B(年度後半)3日のビームタイムを得た。厚膜モデル試料を使った測定で前回よりも感度の良いγ線スペクトルを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)JRR-3の単色中性子線を使った実験については、JRR-3の反射率計 SUIRENでの実験従来の角度分解の中性子反射率測定法を併用しながら、TN-γの測定条件を確立する。 (2)本課題が採択される前にJ-PARCで行っていた白色パルス中性子を用いたTN-γ実験を継続する。BL10は以前申請者らが行っていた中性子反射率イメージング実験のために上流に斜入射実験用のコリメータを配置し、バックグラウンドを抑えた実験が可能になっている。γ線検出器は共同実験者によりJ-PARCのシステムの接続されており、入射中性子の飛行時間と連動させたγ線が可能である。このことは深さ方向の元素分布解析に有利である。 (3)深く埋もれた界面、特に固液界面に局在する軽金属元素を分析する他の手法の調査を継続する。1つは蛍光X線法の高度化である。窓材が極端に薄い、あるいは真空容器中で用いることを前提に窓材を廃止した半導体検出器が販売されている。このような検出器を固液界面の蛍光X線分析に応用することを検討している。いくつかの検出器メーカーの資料を取り寄せコンタクトを開始した。 また、ミュオン特性X線分析も固液界面の研究に有望である。既にリチウムイオン電池の解析などの成果があり、単分子吸着層の解析が可能であれば本研究にも応用可能と考えられる。ミュオン関連の研究会に参加するなど動向を追跡している。
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Causes of Carryover |
検出器の貸出を受けられることになったため、初年度購入予定がなくなった。 JRR-3のビーム使用料と装置改造、新規試料作製に充当する。
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