2021 Fiscal Year Research-status Report
第一原理計算によるダブルペロブスカイト型光触媒の研究
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21K05140
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
西館 数芽 岩手大学, 理工学部, 教授 (90250638)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光触媒 / ダブルペロブスカイト / 第一原理計算 / 表面電子状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,酸化チタンに代わる光触媒物質として有望な可視光応答型ダブルペロブスカイト半導体を対象に,その結晶構造と特異な電子構造を第一原理電子構造計算によって探る。光触媒反応は太陽エネルギーを直接化学エネルギーである水素に変換する反応であり,最もクリーンな水素製造技術となる可能性を秘めている。しかしながら酸化チタンのバンドギャップは紫外光領域にのみ感度があり,他の波長領域の光は吸収できない。また生成された電子・正孔対は再結合の確率が高く,表面における酸化還元反応に寄与するのは限られている。そのため酸化チタンに代わる光触媒が盛んに探索されている。本研究の目的とは可視光に感度のあるダブルペロブスカイト酸化物半導体を探索物質群に設定し,電子構造の設計,混合原子価型元素の選択的置換,表面構造の設計の3つの観点から光触媒特性の機構解明と機能向上に対する指針を得ることである。 本年度はBa2PrBi6ダブルペロブスカイト表面の電子状態を調べるためにHSEハイブリッド汎関数を用いた第一原理電子構造計算を行った。この結晶の(001)面にはBa-Oで構成される面とPr-Biで構成される面の二種類が存在する。底面をBa-O面に固定し,上面をBa-O面およびPr-Bi面とした場合のそれぞれの表面バンド構造を計算した結果,およそ 1.9 eVであるとの結果を得た。バルクのバンドギャップの計算値は3.7 eVであるため,表面においてバンドギャップの変調が発生していると考えられる。一方,実験的に得られている光学バンドギャップの値は1.07 eVであり,依然としてかけ離れた値となった。この原因はアンチサイトなどの格子欠陥ではないかと考えられ,現在,その検証のための計算を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定の通り表面スラブの構築とバンド計算を終えた。仕事関数の見積もりもほぼ終了し,バンドギャップ中の還元・酸化反応レベルの同定を試みている。ハイブリッド汎関数による精度の高い計算も同時進行で進めており,概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現実的な条件における電子状態を見積もるため,表面における酸素欠陥とBサイトの置換を導入する必要がある。それにより光学的バンドギャップの実験値が表面バンドギャップの約半分となっていることを説明できると考えている。今後より現実的な条件を用いて計算の精度を高めていく。
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Causes of Carryover |
本年度の学会がオンラインとなったため旅費が発生しなかった。また極性面における表面バンド計算が当初の想定を超えてはるかに困難であったため,それに対応した小規模ながら小回りの効く計算環境を構築したため使用額が抑えられた。次年度は使用予定額を用いて計算規模を拡大する。
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