2021 Fiscal Year Research-status Report
The Analysis of Thermo-Oxidative Degradation of Polymer Materials by CL-ST-ESR
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21K05146
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂井 亙 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 教授 (70263176)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 劣化 / 自動酸化劣化 / ラジカル反応 / 電子スピン共鳴 / ケミルミネッセンス / ポリプロピレン |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子材料は酸素の存在下において、過酸化反応を通して徐々に酸化劣化する。本研究は、この酸化劣化について、これまで直接的に調べられることがなかった中間的な反応経路を詳しく解明することを目的とするものであり、材料の酸化状態を分析できるケミルミネッセンス(CL)測定と、短寿命ラジカル種を分析できるスピントラップ-電子スピン共鳴(ST-ESR)測定とを同時に行う手法を独自に構築することで、高分子材料の酸化劣化途中で生じる過酸化物質およびラジカル反応中間体が示す挙動の相関性を詳しく調べるものである。 初年度は、測定装置システムの構築を中心に研究を進め、高分子材料の熱劣化過程におけるCL発光を高感度に捉えつつ、ST-ESRにより反応中間体ラジカル種を同時に測定できることを確認した。昨今の電子・半導体部品等の供給遅延の影響を強く受け、当初計画していたラジカル反応中間体の挙動とCL発光量との相関性を調べることはできなかった。しかし,ST-ESRを中心とする実験結果から、まずは未酸化PPに関する研究結果を、1つの学術論文にまとめることができた。また、オンライン参加可能な学会において研究発表を行い、本研究に関する意見を他者からいただくと共に、今後の進展に有用な情報を収集した。 次年度からは、ラジカル反応中間体の挙動とCL発光量との相関性を調べたり、CL発光を分光しながら測定したりすることで、酸化劣化反応のより詳細な情報を調べる。本研究を通じて得られる成果は、高分子材料の寿命を原因療法的かつ能動的に制御するための重要な基礎情報であり、サステナブル社会の実現のために必要不可欠な知見となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、別予算で購入したCL測定装置本体に対して、本申請科研費により、(1)より高感度なCL光センサーへの交換、(2)大断面積を持つ光ファイバーへの交換、(3)ESR接合部の改良、および(4)光学フィルター式CL分光機能の追加、の4点を行うことを計画し、実行した。(1)は、より高感度な光増倍管(PMT)を導入した。(2)は、ファイバー束径をより太いものに改良し、受光量を2.5倍に上げた。(3)は、高感度PMTでも漏れ光が全く検知されない構造のコネクタを、2度の試作により開発した。(4)は、光学バンドパスフィルターを用いて、CL発光を測定できるように改良した。これは、近年、PPからのCL発光は、波長および寿命が異なる数種類の活性物質によるとの報告を知って行ったものである。 これらの改良ののち、未酸化あるいは酸化済みポリプロピレンのサンプルからのCL挙動を、予備実験の場合と比べたところ、より低ノイズかつより高光量で観察できること、またCL発光とESRスペクトルの同時測定が行えることが確認できた。 しかしながら、昨今の電子・半導体部品等の供給遅延の影響を強く受け、実際に装置が納品されたのが2021年12月末となり、それ以降は大学教育業務による多忙な時期を迎えたため、初年度における実質的な実験は非常に限られ、当初計画の、ラジカル反応中間体の挙動とCL発光量との相関性を調べることはできなかった。 しかし、装置が到着するまでに、未酸化または酸化済みPPの熱劣化におけるラジカル中間体についてST-ESR測定による解析を進め、まずは未酸化PPに関する研究結果を、1つの学術論文にまとめることができた。また、オンライン参加可能な学会において研究発表を行い、本研究に関する意見を他者からいただくと共に、今後の進展に有用な情報を収集した。酸化済みPPについても、第2報を近く投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、まず、初年度に行えなかった、ラジカル反応中間体の挙動とCL発光量との相関性を調べる実験を優先的に行って、CL-ST-ESR法の基本技術を確立させる。CL発光は、加える酸素の量、時間、温度による影響を強く受けるため、実験条件を細めに変更して、系統的な実験を行うことで、反応経路の詳細に関する情報を得られると期待している。その後、光学フィルターを用いてCL発光種の区別を試みる。発光種が異なると、それらの寿命も異なるため、ラジカル中間体との相関性を調べることで、非常に有用な情報が得られると期待される。 3年目には、PPに関して不足する実験を行うとともに、研究対象となる高分子材料を、本研究代表者がすでにST-ESR法によってラジカル解析を行った実績のあるポリブタジエンやポリイソプレンなどのエラストマー系材料、およびSB樹脂などの素材にも広げ、高分子材料の酸化劣化に関して、より汎用的な情報が得るための実験を推し進めたい。
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Remarks |
2022年5月26日時点で研究業績のデータを更新中
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Research Products
(9 results)