2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of waste slag conversion process based on chemical methodology and its applications in CO2 capture and utilization
Project/Area Number |
21K05147
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
桑原 泰隆 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (40635330)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 鉄鋼スラグ / リサイクル / 多孔質材料 / 酸化カルシウム / CO2回収貯留 / CO2変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、鉄鋼プロセスで大量に副生する鉄鋼スラグを原料としてCO2吸着能を有する酸化物ナノ多孔体を製造するための化学変換プロセスを開発した。ギ酸や酢酸などの有機酸を用いて高炉スラグを溶解し、逐次的な析出プロセスを経ることで、ほぼ100%のリサイクル効率で酸化カルシウム(CaO)-メソポーラスシリカ複合体へと変換することに成功した。合成した酸化物ナノ多孔体は、含まれるCaOの化学的特性に基づいて、吸着温度700℃において二酸化炭素(CO2)を繰り返し吸脱着可能であることを見出した。また、Fe含有量が多く、利用用途の限定的な転炉スラグや脱リンスラグに対しても本変換プロセスを適用し、高いリサイクル効率でCaO-FeOx-SiO2複合体へと変換できること、およびこれらが優れたCO2吸着特性を有することを確認した。酸化物ナノ多孔体形成過程や、用いる溶解酸の種類が複合体の構造・CO2吸着性能に与える影響についても、詳細な構造分析により明らかにした。さらに、スラグから合成したCaO-メソポーラスシリカ複合体にNi触媒を担持して、メタンのドライリフォーミング反応に応用したところ、他の酸化物担持Ni触媒に比べ優れた触媒活性および安定性を示し、スラグから合成した酸化物ナノ多孔体が有用な触媒担体として利用できることを示した。開発した化学変換プロセスは現在鉄鋼産業が直面している『廃スラグの有効利用』と『CO2排出量の削減』という 2つの重要な問題に貢献する技術として更なる展開が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度から継続実施していた、1) 高炉スラグからの酸化物ナノ多孔体合成プロセスの最適化、2) 製鋼スラグからの酸化物ナノ多孔体合成プロセスの開発、3) CO2吸着回収への応用に加え、令和4年度の目標であった、4)CO2再資源化反応への応用についても実施することができた。ギ酸や酢酸などの有機酸を溶解酸とした逐次的な析出プロセスを経ることで、高炉スラグをほぼ100%のリサイクル効率で酸化カルシウム(CaO)-メソポーラスシリカ複合体へと変換することに成功した。開発した変換プロセスはFe含有量が多い転炉スラグや脱リンスラグに対しても適用可能であり、高いリサイクル効率でCaO-FeOx-SiO2複合体へと変換できた。電子顕微鏡や各種分光分析手法を駆使して酸化物ナノ多孔体の形成過程や、用いる溶解酸の種類が複合体の構造・CO2吸着性能に与える影響についても明らかにした。また、興味深い知見として、Fe含有量の少ない高炉スラグから合成した酸化物ナノ多孔体よりもFe含有量の多い転炉スラグや脱リンスラグを原料とすることで耐久性の高いCO2吸着材が合成できることを見出し、これが酸化物複合体の熱力学的安定性に由来することを明らかにしている。得られた成果は複数の国際専門誌にて発表した。また、スラグから合成したCaO-メソポーラスシリカ複合体にNi触媒を担持してメタンのドライリフォーミング反応に応用し、他の酸化物担持Ni触媒に比べ優れた触媒活性および安定性を示し、スラグから合成した酸化物ナノ多孔体が有用な触媒担体として利用できることを見出している。以上の理由から、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
スラグから合成したCaO-メソポーラスシリカ複合体にNi触媒を担持することで、メタンのドライリフォーミング反応において他の酸化物担持Ni触媒よりも優れた触媒活性および安定性が得られるという重要な知見を見出した。令和5年度は、スラグから合成した酸化物ナノ多孔体の構造・組成と、観察された触媒性能との相関を見出し、更に高活性な触媒開発につなげる。またこれと並行して、X線や放射光を利用した金属種の構造解析や、基質(CO2)吸脱着・反応過程の追跡を行い、合成した触媒で起こる反応機構と触媒に含まれるCaOの役割を明らかにする。また、鉄鋼スラグには高炉スラグの他にも多様な化学組成を有するスラグがある。既に、転炉スラグや脱リンスラグ、脱珪素スラグからも同様の酸化物ナノ多孔体が得られることを見出しており、これら多様なスラグから合成した酸化物ナノ多孔体にNiを固定化することで触媒を合成し、原料となるスラグの含有成分が触媒のナノ構造や触媒性性能に与える影響を調査していく。これら研究を通じ、廃スラグを出発原料としたCO2の回収・利用(CCU)に貢献しうる新しい触媒技術・環境技術の創成を目指す。
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