2022 Fiscal Year Research-status Report
粒子散乱蛍光装置による燃焼排出粒子中の多環芳香族炭化水素の定量分析手法の開発
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21K05152
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
三澤 健太郎 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (10431991)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 粒子分析 / 多環芳香族炭化水素 / 燃焼排出粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
液滴の溶液濃度と粒径及び蛍光信号強度の関係から定量関係を導くことを目的として、前年度に購入した375 nm紫外光レーザーによる蛍光強度測定を行った。測定対象としては紫外吸収により可視蛍光を発するクマリンをエタノール/DOP (フタル酸ジオクチル) に溶解した溶液からネブライザーによって発生させた液滴を使用した。その結果、蛍光強度および蛍光強度/散乱光強度比の溶液濃度依存性が確認されたが、一方で液滴発生手法に依存した発生液滴の粒径分布の非再現性により正確な定量関係を導くことは困難であった。また揮発性の有機溶媒を用いた場合、液滴が揮発することによる液滴中の溶液濃度の変化や微小粒径の固体粒子が生成することでの粒子が球形ではなく不規則な形状となる効果もあり、定量性の検証に不確実性を与えることとなった。 そこで、改めて紫外光吸収により可視蛍光を発する蛍光性PSL (ポリスチレンラテックス) 粒子を用いて蛍光強度測定を行った。単分散で球形の粒径0.5、1.1、2.1 μmの粒子に対して375 nmレーザーを照射して1粒子からの蛍光強度および散乱光強度を同時に測定したところ、蛍光強度/散乱光強度比が粒径ごとに一定値となることが示唆された。シミュレーションにより各粒径の粒子の波長375 nmに対する散乱光強度を計算し、測定された蛍光強度/散乱光強度比とかけ合わせることで蛍光強度を求めたところ、蛍光強度は粒径の2乗つまり表面積に比例することが実験的に確かめられた。これは粒子の蛍光強度が粒子表面の物質量に依存することを示していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度構築した装置を用いて測定を行った。液滴粒子での定量測定に関しては不確実性が残ったものの、球形の固体粒子に対しては定量性について確かな知見が得られた。主たる多環芳香族化合物については測定していないものの、類似した分子構造を持つ色素類に関しては測定が可能であることが示された。総合的に鑑みて研究は順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果から粒子の蛍光強度は粒子の表面に含まれる物質の量に依存すると考えられる。また、含まれる物質の蛍光量子収率や照射するレーザーの波長にも依存する。次年度は様々な多環芳香族炭化水素について蛍光・散乱光の同時測定を行い、その相関係数を決定することで定量関係を明らかにする。また、測定結果を実大気粒子に応用することを検討する。
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