2022 Fiscal Year Research-status Report
混合配位子Rh(Ⅱ)錯体の合成を基盤とする新しい可溶性高分子担持型不斉触媒の創製
Project/Area Number |
21K05153
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
坪和 幸司 (竹田幸司) 北海道科学大学, 薬学部, 講師 (00572497)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高分子触媒 / ロジウム(II)錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
均一系遷移金属錯体を用いた触媒的不斉合成プロセスにおいて、錯体の高分子担体への固定化は、生成物の分離を容易にし、高価な触媒の回収・再利用を可能とする。しかし、従来の高分子上に坦持した配位子と金属錯体との配位子交換を経る固定化では、反応性・選択性の低下をまねき、再利用回数も数回程度に留まっている。これまで研究代表者は、前例のない、四つのカルボキシラート配位子のうち一つだけが異なる配位子をもつ混合配位子Rh(II)錯体を創出し、本錯体の合成を基盤とする新しい固定化触媒の開発に取り組んできた。混合配位子Rh(II)錯体を用いる固定化は、各単量体の割合や構造、重合条件等を調節することで、反応系や合成プロセスに適した物性をもつ高分子錯体の合成を可能とする。そこで、本研究では新しい特性をもつ可溶性高分子の合成を検討した。 昨年度に引き続き、共重合の反応手法・条件を系統的に精査して、低温下でも使用できる可溶性架橋高分子の合成を検討したところ、自由度の高い架橋剤を用いて均一系重合を行うと、可溶性高分子としては異例の-78 °C下でも容易に攪拌可能な可溶性架橋ポリスチレン誘導体が得られた。一般的な可溶性鎖状ポリスチレンが温化低下により急激に粘度上昇を引き起こすのに対して、本架橋高分子の場合、温度変化の影響が著しく小さいことが判明した。 ところで、可溶性架橋高分子については合成例が限られていることから、そもそも機器分析に関する知見が極めて少ないのが現状である。そこで今回、分子量の測定法を種々検討したところ、検出器として光散乱を用いた場合に良好な結果が得られ、Mwが10,800、Mnは5,400であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により研究遂行に制限があったため、高分子触媒の分析や不斉C-H挿入反応の検討に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、高分子の組成や分子量分布が錯体触媒の回収率に及ぼす影響を明らかにする。今回創出した可溶性架橋高分子が低温下でも顕著な粘度上昇を引き起こさない要因として、架橋構造により高分子鎖の絡まり合いが抑制されただけでなく、合成における共重合過程で分子内架橋が形成され、球状に近い構造をもつ高分子が生成している可能性があげられる。そこで、各種機器分析と理論計算を組み合わせて構造解析を図り、ほとんど例のない、架橋をもつ可溶性高分子の新しい特性を解明する。 また、最近申請者は、混合配位子Rh(Ⅱ)錯体の共重合により長鎖アルキル基とイミダゾリウム塩を併せもつイオン高分子錯体を合成した。本錯体はイオン液体に高い親和性を示すだけでなくイオン液体中で、いわゆるミセルとは異なるミクロ疎水性反応場を形成することが判明した。予備的知見だが、基質の濃縮効果により、分子内不斉C-H挿入において、本錯体は母型錯体よりも反応時間を短縮することが可能であった。今後、これまでに得られた知見を、当該イオン高分子錯体に展開し、優れた触媒回転能と不斉識別能を兼ね備え、かつ繰り返し使用可能な触媒を開発する。 ところで、2,3-二置換ジヒドロベンゾフランは、生物活性ネオリグナン系天然物の基本骨格の一つである。そこで、可溶性高分子錯体を用いて、α-ジアゾエステルの分子内不斉C-H挿入反応を鍵工程とするジヒドロベンゾフランライブラリーの合成を進める。
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