2021 Fiscal Year Research-status Report
Space application of GaN photocatalyst
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21K05154
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
坂間 弘 上智大学, 理工学部, 教授 (10242017)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 宇宙コンタミネーション / 光触媒 / GaN / TiO2 / 失活 / 酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙で使うことのできる光触媒としては、酸化物は不適当である。これは、反応中に酸化物中の酸素が消費されることによって酸素空孔による欠陥準位が生じ、欠陥準位を介した電子―正孔再結合が促進され光触媒反応が停止してしまうことによる。実際、二酸化チタン(TiO2)や酸化ジルコニウム(ZrO2)は真空中では約2日で光触媒活性を失った。一方、酸素を含まないGaNは失活しない可能性がある。そこでGaN光触媒の大気中での光触媒活性を評価した。GaN光触媒による水の分解については多くの報告があるが、有機物質の分解に関する報告はほとんどない。メチレンブルー(MB)溶液にGaN光触媒を入れ、UV照射前後のMB吸光スペクトルを分光光度計で測定した。光触媒反応のGaNとTiO2の量子効率ηを比較した結果、GaNの量子効率はTiO2 と同程度であることがわかった。GaNに対して,蛍光寿命測定装置を用いて時間分解PL (TRPL)測定を行った。励起波長は 280 nm とした。GaN からPL が観測された。このことは、GaN中の光生成キャリアの一部が光触媒反応に寄与していないことを意味する。PLスペクトルは、波長365nmに小さなピークを持ち500~700 nmにもブロードなピークがある。このピークはバンド間ルミネッセンス(BB)およびイエロールミネッセンス(YL)である。YLバンドはMBの吸光スペクトルと重なっており、MBがYLバンドの一部を吸収している。PL値の温度依存性を調べた結果、低温では、370-400 nm の領域に小さなピークが現れた。このピークは、浅いドナー-浅いアクセプターバンド(SD-SA)に由来すると考えられる。温度の上昇に伴い、SD-SA ピークは消失しBB の強度は減少した。一方、YL の強度は温度上昇に伴い変化しないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
水晶振動子を水晶振動子マイクロバランス(QCM)装置に装着し水晶振動子にUV照射を行った結果、共振周波数が減少することを見出した。光をあてたことによる局所的な温度変動が原因の一部である可能性があるが、すべて温度変動であるとすれば温度変動が大きすぎて実態に合わない。UV光は水晶振動子上部の金電極が吸収していると思われるが、温度が上昇し熱歪が発生して水晶が変形したことで共振周波数が変わった可能性がある。しかし、水晶振動子の上にTiO2薄膜を蒸着し同様にUV照射を行うと、逆に共振周波数が増加する。どちらの場合も熱歪が1つの原因であるとしても、TiO2薄膜がある場合とない場合で逆に変化する理由は不明である。また、その変化量もまちまちである。共振周波数の変化量で光触媒による分解量を求めようとしているため、光照射による周波数変化が制御できないのは重大問題である。計画では初年度にQCM による測定法を確立する予定であったが、以上の理由からまだそれが達成できていない。予定が若干遅れているのはそのせいである。2年目は、最初にまずこの問題を解決する必要がある。もう1つの問題は、水晶振動子上に良質なGaN光触媒薄膜を作製することに成功していない点である。GaN薄膜はゾルゲル法、スパッタリング法で作製しているが、どちらの方法でも光触媒として十分な品質をもつ薄膜はできていない。作製条件を最適化してより良質な薄膜を作る努力をする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
既存の真空装置に温度可変型水晶振動子マイクロバランス(QCM)を装着し、さらに汚染物質を蒸着するための有機物質蒸着源を取り付ける。金電極があらかじめついている水晶センサーの表面に光触媒の薄膜を堆積しQCM本体に取り付ける。さらにその上に汚染物質を真空中で付着し共振周波数を測る。その後、真空中でUV光を照射して汚染物質を分解し、再度共振周波数を測定する。UV光照射前後の共振周波数の変化から分解量を見積もる。このQCM測定装置を用いて電子天秤よりはるかに微量(ng程度)の分解量を高精度で測定する。汚染物質が完全に分解されたとしても、有機物質蒸着源を用いて真空中で汚染物質を連続的に蒸着できる。同時に別の真空装置を使って、同様に試料を作り真空中でUV光を当てたときの光の透過率変化を光学的方法で調べ、QCMで測った場合と比べる。さらに分解性生物の同定をGC-MSで行う。粉末のGaN光触媒と汚染物質を混合したものをシャーレに入れ、別の真空装置内で一定期間分解させる。その後真空装置より取り出し分解生成物をGC-MSで物質的に同定する。さらにJAXAの“真空複合環境試験設備”を利用して、GaN光触媒のAO、EB、VUVに対する耐性を調べる。作製試料を持ち込んでAO、EB、VUVを照射し、その影響を調べる予定である。GaNはバンドギャップが小さすぎる可能性があるため、GaNよりもバンドギャップが大きな非酸化物を試す。具体的にはハロゲン化物が有望である。しかしそのほとんどは光触媒としての評価がされていない。ただし、ハロゲン化物の薄膜を作製するノウハウがない。そこで、まず市販されているハロゲン化物の粉末を購入し、光触媒としては不活性なSiO2膜をバインダーとして粉末を定着させる。この方法によりそれらのハロゲン化物粉末光触媒が宇宙機コンタミ除去用として使えるのかどうか見極めをつける。
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Causes of Carryover |
本年度ゾルゲル法でGaN薄膜を作製するためにスピンコーターを購入予定であったが、スパッタリング法で作製する方が良質な薄膜ができることがわかったために、製法をスパッタリング法に切り替えた。そのため、スピンコーターを購入する必要がなくなったため当初予定の予算より使用額が減少した。 次年度は、まず薄膜作成のためのスパッタリングターゲット、水晶振動子、石英基板、薬品などの消耗品に使用する。
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Research Products
(1 results)