2021 Fiscal Year Research-status Report
Studies on functional improvement by deforming colloidal particles
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21K05164
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
谷口 竜王 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (30292444)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 液晶カプセル / 高分子コロイド / 可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合 / 転相温度乳化法 / エマルション / コアセルベーション / 電場応答性 / 表面開始原子移動ラジカル重合(SI-ATRP) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「コロイド粒子の異形化による機能向上に関する研究」を推進するにあたり,初年度は,(i) 液晶カプセルの作製,(ii) 高分子コロイド材料の表面修飾について検討した。(i)については,oligo(ethylene glycol) methyl ether methacrylate(OEGMA)とmethyl methacrylate(MMA)との逐次的な可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合により合成した両親媒性ブロックコポリマー(PMMA20-b-POEGMA36)を用いた転相温度乳化(phase inversion temperature: PIT)法により,2,2,2-trifluoroethyl methacrylate(TFEMA),市販のフッ素系液晶化合物(JD-5037XX),およびethylene glycol dimethacrylateが溶解したMMAを油相とするoil-in-water(O/W)型エマルションモノマー油滴のミニエマルション重合を行い,液晶ナノカプセルを作製した。電子顕微鏡観察,熱重量分析,示差走査熱量測定により,油滴内でのコアセルベーションの進行に伴って,カプセル構造が自発的に形成されていることを明らかにした。また,液晶カプセルを挟んだITO電極間に電場を印加すると,可逆的に透過光強度が変化したことから,TFEMAが共重合されたカプセル壁が電場応答性の付与に重要な役割を果たしていることが示された。(ii)については,コロイド特性は表面特性に強く影響されることを考慮し,高分子ラテックス粒子上でのOEGMAの表面開始原子移動ラジカル重合(SI-ATRP)によりグラフト鎖を導入した。また,コロイド特性を詳細に評価するだけでなく,タンパク質の非特異吸着の抑制,グラフト鎖末端のアミノ化による酵素の化学的固定化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究「コロイド粒子の異形化による機能向上」を推進するために,初年度となる2021(令和3)年度はコロイド特性を厳密に制御されたコロイド粒子として,液晶カプセルとグラフト鎖を有するコア-シェル粒子の作製に主眼を置いた実験を行った。特に,液晶化合物などの光学材料を内包するカプセル材料では,表面張力および接触角により算出される拡張係数,Hansen溶解度パラメーター(Hansen Solubility Parameters: HSPs)に基づく理論的な予測が重要であることを示すとともに,カプセル内に内包されたフッ素系液晶化合物の電場応答性の発現には,カプセル壁原料となるモノマーを適切に選択することが重要であることを明らかにした。また,高分子ラテックス粒子の表面特性の制御という観点からは,SI-ATRPによるノニオン性高分子POEGMAをグラフト鎖として導入し,タンパク質の非特異吸着の抑制に有効であることを実証した。さらに,potassium phthalimideとhydrazineを用いたGabriel合成により,POEGMAグラフト鎖の生長末端をアミノ化し,aldehyde基を有するhorseradish peroxidase(activated-HRP)の化学的固定化を行い,制御/リビングラジカル重合の特徴でもある成長末端官能基化を高分子ラテックス粒子表面にグラフトした高分子鎖でも実現した。本研究成果は,学術雑誌に掲載されただけでなく(Chem. Lett., 2021, 50, 1566-1569. Colloid Polym. Sci., 2022, 300, 319-331.),掲載が受理された論文も別にあるため,本研究は順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」および「現在までの進捗状況」で述べたとおり,初年度となる2021(令和3)年度では,コロイド特性,内部および表面構造が詳細に評価された液晶カプセルやコア-シェル粒子などのコロイド材料を作製することができた。また,液晶化合物を内包する液晶カプセルについても,カプセル壁の組成が電場応答性に及ぼす影響を明らかにすることができたことから,2年目となる2022(令和4)年度は,コロイド材料の変形と機能発現との関連性を評価するため,電子顕微鏡(SEM,TEM)観察,光散乱測定などによるコロイド材料の観察を行うとともに,熱分析(TGA,DSC),偏光顕微鏡観察(POM)などにより,カプセルに内包された液晶化合物などの光学材料の外場(温度,電場など)に対する応答性を調査する。 また,先行実験としてマイクロメートルスケールの真球状ポリスチレン中空粒子を撹拌したところ,中空粒子のpoly(vinyl pyrrolidone)(PVP)水溶液の濃度を適切に設定することにより,比較的短い時間で均一な円盤状中空粒子に異形化することがわかった。さらに,円盤状中空粒子の水分散液を基板上に滴下すると,ほとんどの円盤状中空粒子が円状上下面をface-to-face型に重なり合って堆積していた。したがって,平面方向では可視光に干渉を起こさず,数百ナノメートルの厚み方向では可視光領域のサイズで構造化される興味深い挙動を示すことから,非球状に異形化されたコロイド材料が受ける流体力学的影響にも焦点を当てた検討を行い,コロイドアレーを作製の基盤となる知見を得たいと考えている。
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Research Products
(11 results)