2022 Fiscal Year Research-status Report
Studies on functional improvement by deforming colloidal particles
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21K05164
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
谷口 竜王 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (30292444)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 液晶 / カプセル / ラテックス / ミクロ相分離 / 制御/リビングラジカル重合 / グラフト鎖 / 異形化 / エマルション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「コロイド粒子の異形化による機能向上に関する研究」を推進するにあたり,初年度は,(i) 液晶カプセルの作製,(ii) 高分子コロイド材料の表面修飾について検討した。(i)については,逐次的な可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合により合成した両親媒性ブロックコポリマーを用いた転相温度(Phase Inversion Temperature: PIT)乳化法により,フッ素系液晶化合物,および架橋剤が溶解したメタクリレート系モノマーを油相とするoil-in-water(O/W)型エマルションモノマー油滴のミニエマルション重合を行い,液晶ナノカプセルを作製した。液晶カプセルを挟んだITO電極間に電場を印加し,カプセル内に内包された液晶化合物の電場応答性を確認した。(ii)については,コロイド特性は表面特性に強く影響されることを考慮し,高分子ラテックス粒子表面からの原子移動ラジカル重合(Surface-Initiated ATRP)によりグラフト鎖を導入した。2年目となる2022(令和4)年度には,油滴内での相分離に関する基礎的な知見を得ることを目的として,制御/リビングラジカル重合により誘起されるミクロ相分離現象ならびにポリマーフォトニック結晶の生成機構を小角中性子散乱(Small Angle Neutron Scattering: SANS)により検討するとともに,液晶ナノカプセルに内包される液晶の組織化に関連して,鎖長の異なるアルキル鎖を有する3,4,5-trialkoxybenzyl pentafluorbenzoateのカラム相における相転移現象,液晶性,パッキング構造の解明についても合わせて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究「コロイド粒子の異形化による機能向上」の2年目となる2022(令和4)年度は,油滴内での相分離に関する基礎的な知見を得ることを目的として,(i) 重合により誘起されるミクロ相分離現象,(ii) 液晶化合物の相転移および液晶性,について検討した。(i)については,トリブロック重合によるミクロ相分離を利用した可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合により,可視光を選択的に反射するポリマーフォトニック結晶を作製した。ホモポリマーを重合系に添加するとミクロドメインの特定の相が膨潤し,長波長構造色を持つPPCの作製が可能になった。ホモポリマーの添加により,ラメラ状ミクロドメインの形態を維持したままドメイン間隔が広がることが,SANSにより確認された。この方法は,ポリマー鎖の絡み合いによる長波長構造色の飽和を抑える問題を克服している。さらに、反応容器全体を回転させ、反応物を均一に拡散させることで、長波長で単色の構造色を持つPPCを製造することができた。(ii)については,様々な長さのアルキル鎖を有する化合物のカラムナー相の相転移挙動,液晶性,分子充填構造について検討した。ベンジル基のアルキル基の組み合わせが、生成する柱状液晶相の種類や液晶ドメインのマクロな形態と密接に関係していることが明らかになった。本研究成果は,学術雑誌に掲載されただけでなく(https://doi.org/10.1246/cl.220089,https://doi.org/10.1080/02678292.2022.2142884),液晶ディスプレイなどのデバイスに使用されるニッケルメッキ粒子の表面修飾に関する論文が受理され,水媒体中に分散した真球状液晶ナノカプセルの撹拌による変形に関する論文も投稿済であり,本研究は順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」および「現在までの進捗状況」で述べたとおり,1年目と2年目で液晶ナノカプセルの作製,高分子コロイド材料の表面修飾,重合により誘起されるミクロ相分離,ならびに液晶化合物の相転移について検討した。また,撹拌による水媒体中に分散した真球状液晶ナノカプセルの円盤状への変形と流体力学的特性,液晶ディスプレイに使用されるニッケルメッキ粒子の表面修飾,に関する成果も論文として投稿することができた。最終年度となる2023(令和5)年度では,液晶化合物が内包された液晶ナノカプセルを変形し,液晶化合物の電場応答性について評価する。既に液晶化合物を内包したナノカプセルを作製し,撹拌による剪断力で変形する試みを実施しているが,明確な単核構造を形成させることを目的として,両末端に重合官能基を導入したポリプロピレングリコール誘導体による架橋効果などについて検討を始めている。最終年度における具体的な評価手法として,電子顕微鏡(SEM,TEM)観察による形態観察,熱分析(TGA,DSC)による液晶化合物の内包量の評価,偏光顕微鏡観察(POM)によるカプセルに内包された液晶化合物の外場(温度,電場など)応答性を調査する。そして,撹拌による液晶ナノカプセルの外場応答性が変形により受ける影響を評価し,「コロイド粒子の異形化による機能向上」の総括的理解に向け,本研究をまとめる予定である。
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Research Products
(12 results)