2022 Fiscal Year Research-status Report
外部刺激を駆動力として伸縮運動する二重らせん高分子の創製と応用
Project/Area Number |
21K05166
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
田浦 大輔 名城大学, 理工学部, 准教授 (20622450)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超分子 / 二重らせん |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、外部刺激に応答して可逆的に伸縮運動する二重らせん高分子を合成し、伸縮運動を巨視的な運動に変換可能な系の構築を目指す。すなわち、二重らせん高分子の基板への固定化やハニカム構造を有する二次元シートの作製により、外部刺激による可逆的・微視的な伸縮運動に伴う変化を巨視的レベルに増幅可能な機能性材料の開発に挑戦する。 令和4年度は、以下に示す結果を得た。 A. アルキンとアジドのクリック反応により生成するトリアゾールリンカーで連結したポリマー (配位子) の合成を目指し、まず、10段階の反応を経て、両末端にヨード基 (I基) が置換され、中央にビフェニル部位を有するテトラフェノール誘導体のヒドロキシ基をメトキシメチル基 (MOM基) で保護した化合物 (1) を得た。さらに、薗頭・萩原クロスカップリングにより、1の両末端にトリメチルシリルエチニル基を導入した化合物 (2) を合成した後、MOM基を脱保護することで、両末端にトリメチルシリルエチニル基が置換され、中央にビフェニル部位を有するテトラフェノール誘導体 (3) を合成した。 B. 段階的な高分子化を実現するために、まず、両末端にトリメチルシリル基 (TMS基) が置換され、中央にビフェニル部位を有するテトラアニソール誘導体 (4) を得た。さらに、一塩化ヨウ素を用いて、両末端のTMS基の片方のみをI基に変換することで、片末端にI基とTMS基がそれぞれ置換され、中央にビフェニル部位を有するテトラアニソール誘導体 (5) (1量体) の合成を試みた。精製により、4を除去することはできなかったが、次の反応に関与しないと考え、(4を含む) 5と1,4-ベンゼンジボロン酸ビス(ピナコール)エステルの鈴木・宮浦クロスカップリングにより、5がフェニレンリンカーで連結した2量体 (6) (配位子前駆体) を合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の計画通り、外部刺激に応答して可逆的に伸縮運動する二重らせん高分子の合成を目指して研究を遂行しており、キー化合物である2や3および5や6が得られたものの、現状では、その実現には至っていない。以上の結果から、本研究課題はやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に得られた結果をもとに、以下の研究を推進する。 A. 2のTMS基を脱保護して得られる化合物 (7) とジアジド化合物のクリック反応 (重合) により、7がトリアゾールリンカーで連結したポリマー (配位子前駆体) を合成するとともに、MOM基を脱保護して得られるポリマー (配位子) を用いた二重らせん高分子の合成をも目指す。 B. 1の両末端にシランカップリング剤を導入した後、MOM基を脱保護して得られるテトラフェノール誘導体からなる刺激応答性伸縮二重らせん分子を合成するとともに、化学結合を介して、ガラスなどの基板上に固定化することで、外部刺激により、分子レベルでの伸縮運動を巨視的なスケールに変換可能な分子リフトの構築をも目指す。 C. 6の脱メチル化により、目的とする2量体 (配位子) を合成し、また、同様の手法を用いて、段階的に、多量体 (配位子) を合成するとともに、分子量の制御された二重らせん高分子の合成をも目指す。 D. 鈴木・宮浦クロスカップリングにより、ベンゼン環の1,3,5位に5を導入した後、脱メチル化により得られる化合物 (8) (配位子) を合成し、8と水素化ホウ素ナトリウムの反応により、伸縮可能な二重らせん骨格からなるナノ空孔 (ハニカム構造) を有する二次元シートを作製するとともに、外部刺激により、ナノ空孔のサイズを可逆的に制御可能な系の構築をも目指す。
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