2021 Fiscal Year Research-status Report
Precision Enzymatic Synthesis and Supramolecular Formation of New Amylose Analog Polysaccharides
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21K05170
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
門川 淳一 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (30241722)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山元 和哉 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (40347084)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アミロース / アナログ多糖 / 酵素合成 / 超分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、グルカンホスホリラーゼ(GP)酵素触媒重合を利用して新規な非天然型のα(1→4)-多糖(アミロースアナログ多糖)の合成とナノ集合体(超分子)形成挙動について検討する。近年、構造明確な多糖合成の手法として酵素反応が注目されている。グルカンホスホリラーゼ(GP)は、グルコース1-リン酸(Glc-1-P)をモノマー、α(1→4)-非還元末端をプライマーとして構造明確な多糖(アミロース)を得る重合を触媒する酵素である。GPは基質特異性の緩さを有することから、研究代表者はGPをアミロースアナログ多糖合成に用いることができることを見出してきた。 本年度の研究では、非天然型の基質であるグルカールと天然型の基質であるGlc-1-Pをコモノマーに用いたGP酵素触媒共重合により部分2-デオキシ化アミロースの合成を行った。生成物のNMR測定により構造を、X線回折測定により結晶構造を解析した。この反応では、グルカールから2-デオキシグルコース1-リン酸をin-situで生成し、これが真のモノマーとして挙動しGlc-1-Pと良好に共重合することが分かった。また適度に調整された二つのユニット比ではランダム配列となり結晶構造を形成しないことが確認された。このため、この非晶性多糖からは容易にフィルムを形成することができた。この多糖フィルムに対する水の接触角測定から、疎水性を示すことを見出した。 天然の親水性多糖であるグリコーゲンはGP触媒重合の高分子プライマーとして挙動することから、グリコーゲンからの上記GP酵素触媒共重合により部分2-デオキシ化アミロース鎖の伸長を行った。生成多糖から得られたフィルムに対する水の接触角測定から、極めて強い疎水性を示すことが分かり、部分2-デオキシ化アミロース鎖の酵素的修飾が親水性高分子の疎水化に有効な手法であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、GP酵素触媒共重合で得られるアミロースアナログ多糖(部分2-デオキシ化アミロース)フィルムが疎水性を示すことを見出した。親水性の多糖であるアミロースの2位のみを部分的にデオキシ化するだけで疎水性になることを発見したことは、多糖化学の分野では画期的なことである。また、天然の親水性多糖であるグリコーゲンに対して、GP酵素触媒共重合を用いて部分2-デオキシ化アミロース鎖を修飾すると強疎水性になることが分かった。すなわち、部分2-デオキシ化アミロース鎖の酵素的修飾が親水性高分子の疎水化に極めて有効な手法であることを明らかにし、今後の本手法の発展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
種々の親水性天然高分子に対してグルカール/Glc-1-PをコモノマーとするGP酵素触媒共重合による部分2-デオキシ化アミロース鎖の修飾を行い、疎水化を検討する。例えば、カルボキシレート基を有するカルボキシメチルセルロースやポリグルタミン酸に対して縮合反応により重合のプライマー(マルトオリゴ糖)を導入する。生成物を高分子プライマーとして用いたGP酵素触媒共重合により、部分2-デオキシ化アミロース鎖の伸長を行う。生成物のNMR測定により構造を、X線回折測定により結晶構造を解析する。フィルム形成能を評価し、フィルムに対して水の接触角測定を行い疎水性を調査する。さらに、疎水性プラスチックなどとの複合材料創製を行うことにより相溶性を確認する。 また、グルカールと他の非天然型モノマーを用いたGP酵素触媒共重合により新規アミロースアナログ多糖の合成を検討する。生成物の構造および結晶性を評価し、新規多糖としての性質を明らかにする。
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