2023 Fiscal Year Annual Research Report
高分子光運動材料の液体窒素中における光変形メカニズムの探究
Project/Area Number |
21K05171
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
宇部 達 中央大学, 研究開発機構, 機構准教授 (80613364)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 架橋高分子 / 光異性化 / 光アクチュエーター / 極低温 / ブリッジアゾベンゼン |
Outline of Annual Research Achievements |
架橋高分子にフォトクロミック色素を導入すると,光照射によりフィルムの屈曲などのマクロな変形を引き起こすことが可能になる。この高分子光運動材料は,電源や配線が不要なソフトアクチュエーターとしての応用が期待されている。これまでの研究において,光変形が液体窒素中においても誘起可能であることが明らかになっている。本研究は,フォトクロミック高分子における分子レベルの構造とマクロな光応答性との相関を攻究し,極低温における変形メカニズムを解明することを目的した。 前年度までに,フォトクロミック分子としてブリッジアゾベンゼン誘導体を用いると,これを含有する架橋高分子フィルムが液体窒素中において良好な光屈曲特性を示すことを明らかにした。最終年度においては,架橋高分子中のフォトクロミック部位の液体窒素中における光異性化挙動を詳細に評価し,光変形メカニズムを考察した。ブリッジアゾベンゼン部位を有する架橋高分子フィルムを液体窒素に浸漬し,光照射した際の吸収スペクトルの変化をリアルタイムで評価したところ,液体窒素中においても室温と同等の光異性化効率を示すことが分かった。これは,架橋高分子中のブリッジアゾベンゼンの周囲に十分な自由体積が存在することを示している。このブリッジアゾベンゼンは高分子の架橋部位に存在するため,光異性化による分子形状の変化が架橋鎖の両端間距離の変化をもたらし,高分子ネットワークの変形を誘起すると推察している。また,試料をらせん状に成形し液体窒素中で光を照射すると,らせん径の増大および減少が起こり,液体窒素中においても運動モードを初期形状により制御できることが分かった。本研究を通じて,分子の熱運動が著しく制限された極低温環境においても,光化学プロセスにより高分子の運動を誘起できることが明らかになった。
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