2021 Fiscal Year Research-status Report
ループ構造を鍵とするπ共役高分子の特異高次構造構築
Project/Area Number |
21K05177
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
名倉 和彦 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 研究員 (60758332)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オリゴチオフェン / 高次構造 / π共役 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,溶液状態においても自発的に2次元シート構造を形成するポリチオフェンの合成,および,2次元シート構造が光物性に及ぼす影響について検討した.ループ状オリゴチオフェンユニットの片末端を保護し,オリゴマー化と脱保護を繰り返すことで選択的に単分散の鎖超をもつオリゴマーを合成する手法を確立した.保護基として長鎖シリル基を用いることで溶解性を向上し,精製および逐次反応の効率化を達成できた.サイズ排除クロマトグラフィーの結果,得られたオリゴマーはループ状ユニットの剛直性に起因して,鎖長が伸びるに従って流体力学的半径が増大することが確認された.吸収および蛍光スペクトル共に,鎖長が伸びるに従って長波長シフトすることから,ユニット間のπ共役が拡張していることを明らかにした.さらに,吸収スペクトルの温度可変測定の結果,温度低下にともなって逐次的な長波長シフトおよび顕著な長波長シフトの2段階の変化を示すことから,シート構造への転移と会合体の形成を示唆する結果を得た.また,NMRにおいても顕著な濃度依存性を示ことから,鎖長が伸び,サイズの増大に伴って会合体を形成する濃度が低下する挙動が見られた.得られたオリゴマーのドロップキャスト法により調製した薄膜は,溶液状態と比較して顕著な色調の変化を示し,偏向顕微鏡観察において明確な複屈折を示すことから,凝集状態において分子が配列した構造を形成する予備的な知見も得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は標的とした巨大分子の合成を達成し,溶液状態においてユニットの剛直なループ構造を維持しているいることが確認できた.また,溶液状態,薄膜状態共に会合体を形成する知見を得ることができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
合成した単分散オリゴチオフェンの凝集状態における構造および物性について検討する.様々な溶媒における会合挙動について検討し,周囲環境(温度,粘性,誘電率)の会合構造に及ぼす影響を明らかにする.また,薄膜状態における光学特性およびX線回折手法を用いて会合様式を明らかにする.各種熱分析をもちいて凝集状態の構造転移,相転移挙動に関しても検討する.
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