2022 Fiscal Year Research-status Report
ループ構造を鍵とするπ共役高分子の特異高次構造構築
Project/Area Number |
21K05177
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
名倉 和彦 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 研究員 (60758332)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ポリチオフェン / オリゴチオフェン / π共役 / 高次構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,昨年度合成した2次元シート構造を形成するポリチオフェンの光・電気化学特性および会合状態における物性と構造について調べた. 同じ鎖長,置換基位置をもつ直鎖状の有する参照化合物を合成し,溶液状態における吸収特性の鎖長依存性についの詳細な解析を行った.ループ構造を構成単位とすることで,最長で23チオフェンユニットにわたってパイ共役長が有効に広がっていることを明らかにした.また,量子化学計算の結果,シート構造の形成に伴って,高次の励起状態への電子遷移も許容になるため,直鎖状高分子に比べ,幅広い波長領域の光を吸収することを見出した.また,電気化学特性についても比較したとろ,シート状ポリチオフェンは,直鎖状分子とは異なり,拡張により酸化電位の連続的なシフトおよび低い酸化電位を示すことを見出した.これは,吸収スペクトルから得られた知見と同様に,2次元シート全体にパイ共役を効率的に非局在化できていることを示唆する結果である.凝集状態における相転移挙動について検討したところ,シート状構造の形成により,高い融点,幅広い温度域における液晶相の形成を見出した.薄膜状態における吸収スペクトルでは,溶液状態に比べて吸収バンドの顕著な長波長シフトが見られた.これらの結果は,シート構造の積層に起因したπ共役骨格間の相互作用の発現を示唆している.薄膜状態のX線回折の結果からも,シート構造の積層に相当する回折ピークが見られたことから,1次元π共役鎖の2次元化により,効率的に積層構造を形成できる知見を得た.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シート状構造の形成にともなう光学物性,電気化学特性の評価から,π共役をシート全体に効率的に拡張可能であることが確認できた.また,薄膜状態における会合体を形成においてシート構造が積層した高次構造の知見が得られたため.
|
Strategy for Future Research Activity |
合成した単分散ポリチオフェンの凝集状態における構造および物性,機能開拓について検討する.側鎖構造の改変や溶媒蒸気等の外部刺激をトリガーとして凝集状態における高次構造や積層構造の制御を試みる.また,空孔をもつシート構造の形状を活かしたドーピングや導電性についての検討を行う.
|
Causes of Carryover |
本年度に購入を予定していた消耗品(装置付属部品)の納期が間に合わなく,購入を見合わせたため次年度使用額が生じた. 次年度は予定していた消耗品(装置付属部品)の購入を予定している.
|