2023 Fiscal Year Annual Research Report
ループ構造を鍵とするπ共役高分子の特異高次構造構築
Project/Area Number |
21K05177
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
名倉 和彦 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, 研究員 (60758332)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オリゴチオフェン / π共役 / 高次構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,前年度合成した2次元シート構造を形成するオリゴチオフェンの会合状態における構造の詳細とその制御について調べた. 単結晶X線構造解析により,合成したオリゴチオフェンは数ナノメートルサイズの平面性の高いシート構造であることを明らかにした.チオフェンユニット間の二面角は小さく,ループユニットがトランス配座を持つため,オリゴチオフェン鎖全体がほぼ同一平面上にS字構造を形成していた.また,従来の直鎖状オリゴチオフェン誘導体は主鎖および側鎖同士の積層によりラメラ状の積層構造を形成するのに対し,シート状構造を形成することで,シート構造が煉瓦積み様式で積層していることを見出した.これは従来の1次元共役高分子では形成が困難な高次構造であり,小分子を用いた高移動度有機半導体に見られる集積構造であることから,従来の共役高分子に比べて半導体特性の向上が期待できる.また,同様の積層構造は,溶液プロセスでの薄膜形成,加熱下でのラビング,溶媒蒸気によるアニーリングで形成できることも見出した.得られた薄膜は,ラビング方向に平行な分子配向かつ基盤に対してフェイスオン様式の積層構造をもち,シート状分子構造の特異な吸収特性に起因した角度依存の直線偏光二色性を示すことを明らかにした. 本研究を通じて,π共役高分子にループ構造を積極的に導入することで共役高分子の構造を2次構造から4次構造まで階層的に制御可能であることを明らかにした.これにより,従来の1次元π共役高分子では達成不可能な特異な光電子物性や集積構造の構築を達成した.今後.得られた結果を学会や論文として報告していく.
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