2021 Fiscal Year Research-status Report
アザカリックスアレーントリアジン環の相互作用の解明とポリマー材料への展開
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21K05178
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
芝崎 祐二 岩手大学, 理工学部, 准教授 (90323790)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カリックスアレーン / ポリマー / 多重水素結合 / 高性能ポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、1,3,5-s-トリアジン骨格含有高分子の設計・合成、応用展開に関わる研究を行ってきた。すなわちアザカリックスアレーントリアジン(ACAT)を主鎖に含むポリマー(c-PG)が従来型の鎖式ポリマー(l-PG)と比較して格段に高い耐熱性と機械特性を示しながら、フィルムは溶媒可溶性であり、優れた光透過性、無着色性を有することを見出した。この要因は、主鎖に配置された本来それほど強くないACATの分子間相互作用がポリマーフィルム中の各所で相乗的にはたらき、ポリマー鎖間を緻密に物理架橋しているためと考えた。そこで令和3年度は、ACAT骨格の相互作用について、モデル化合物を合成して赤外分光法ならびに核磁気共鳴法による解析、超分子化について検討を行った。さらに、ポリジメチルシロキサン(PDMS)中にACATを導入し、ACATが発現する相互作用力がポリマー中でどのように作用するのかを検討した。その結果、ACCAT間には弱い多重水素結合がはたらくが、ポリマー中に分散させるとそれらはポリマー中のエーテル基などと相互作用することで簡単に分散することが明らかとなった。PDMSに対して導入するACATの配合量を増やすにつれてPDMSの主鎖の運動性が低下し、PDMSが常温で液状であるのに対して自立フィルムの作製が可能となった。DMAによる動的熱解析からACATの多重水素結合がPDMSの運動を著しく制限していること、また、Tgにおける分子運動の活性化エネルギーは芳香族ポリマーと同等であるほど高いことも明らかとした。以上の成果をEuropeanPolymerJournalに投稿し、高評価を得、掲載に至っている。今後、分岐型ポリエチレンイミンの末端にACATをぶらさげたデザインや、低分子ACAT化合物が添加剤としてポリマーに与える影響を調べるとともに、多重水素結合の更なる解明を行うことを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はACAT間にはたらく相互作用力の詳細の解明を行い、それをもとに、ACATのポリマー中での密度や配置がポリマーの物性に及ぼす影響を解明することである。初年度はACTAを含む低分子化合物群を合成し、それらのスペクトルデータ、固体中、溶液中での挙動の観察を行い、材料として、PDMS中に導入した際のACATの効果について定量的に解析することができた。従って、初年度の目的としては完全に達成されたと考える。当初の目的に従い、次年度は、低分子化合物について更なる解析により多重水素結合の効果、作動機構の解明などを行うとともに、PDMSが鎖式出会ったことから分岐型ポリエチレンイミンに対するACAT導入効果を解明し、さらに低分子化合物をポリマー中に導入(混合)した際の挙動などについて観察し、ACATが低分子化合物としてどのようにポリマー主鎖に影響を及ぼすのかを明らかとしていきたい。最終的には、ACATの多重水素結合が形成する超分子の創成と応用展開という枠組みでの研究開発を行い、高分子合成分野に新しい切り口としての研究を展開していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、ACATを一官能化し、それをポリマーにぶら下げる導入方法を検討する。申請前の芳香族ポリマー主鎖へのACATの導入は、ポリマーの耐熱性、機械特性を格段に向上させた。しかし一方で、主鎖が硬すぎるため、ACATの効果が明確ではなかった。一方、昨年のPDMS主鎖へのACATの導入はPDMSが室温で主鎖のミクロブラウン運動を起こすポリマーであることから、ACATがその運動を確実に停止させるピン留め効果を明確に確認することができた。個人的には、温度を変えていった際に、ポリマーのピン留め効果がとれる瞬間、その際に多重水素結合が切断させるスペクトル、その温度域では、切断された多重水素結合が再度別の部位で結合を形成する様子などを詳細に観察したかったが、そこまでには至っていない。これらを明確化するべく、各種低分子モデル化合物を合成しているので、本年度以降、温度による多重水素結合の切断を明確に観察できるように努力したい。一方、ポリマーにぶら下がったACAT基が多重水素結合することでポリマーの運動性がどのように影響を受けるのかについても観察するとともに、それが効果的である場合には、ポリマーの分子量を低下させ、どの分子量まで高分子性を維持できるのかについて解明していきたい。高分子性は分子量1万で明確化されるが、今回のACATによる多重水素結合性により分子量数千のオリゴマーでも、それらが超分子構造体をとり、高分子性が維持される可能性があると期待しているためである。
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Research Products
(2 results)