2021 Fiscal Year Research-status Report
易分解性硬化物を与える芳香族系バイオベースカーボナート樹脂の開発
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21K05189
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
松本 幸三 近畿大学, 産業理工学部, 教授 (90273474)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カーボナート / 二酸化炭素 / バイオベース / 分解性 / ウレタン / 熱硬化 / ネットワークポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂は物性に優れた樹脂硬化物を与えることから広くに利用されているが、安定な3次元網目状の分子構造を形成するため分解性に乏しく廃棄時には問題となる。また、多くの樹脂は石油由来原料から合成されるため、資源枯渇やCO2排出量増大などの問題が懸念される。1分子に複数の5員環カーボナート基を持つカーボナート樹脂はエポキシ樹脂にCO2を吸収させることで合成でき、ジアミン類との反応によりヒドロキシウレタン系の硬化物となり、さらに高温に加熱すると分子内の水酸基により逆反応が進行して容易に分解できることから環境調和型の樹脂となり得る。今年度は、生物由来物質チラミンを用いて5員環カーボナート樹脂を合成し、硬化反応および硬化物の物性検討を行った。 チラミン、エピピクロロヒドリン、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(触媒)を40℃に加熱後、水酸化ナトリウム水溶液を作用させ、ジエチルエーテル/水で後処理、濃縮、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製してチラミントリエポキシド(TTE)を得た。TTEのN,N-ジメチルホルムアミド溶液にLiBr触媒を加えCO2雰囲気下100℃に加熱後、反応液を酢酸エチル/水で後処理、濃縮、真空乾燥しチラミントリカーボナート(TTC)を得た。TTCに1.0当量の4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン(TODA)を添加し2枚のテフロン基板間に挟み150℃で1時間加熱した結果、均質で丈夫な硬化物フィルムが得られた。IR測定によりジアミンの付加反応が完結していることが確認できた。示差走査熱量分析、熱重量分析、引張試験の結果、ガラス転移温度-2℃、5%重量減少温度223℃、破断強度2.2MPa、破断伸び1.2が求まり、得られた硬化物は比較的低い熱分解温度を示す易分解性の材料で室温で柔軟かつ強靭なゴム状材料あることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
芳香族系のバイオベースカーボナート樹脂を合成するために、今年度は赤ワインや熟成チーズなどに含まれる生物由来物質のチラミンに注目して検討を行った。チラミンはフェノール性水酸基と第1級アミノ基を持つ化合物で3官能性のカーボナート樹脂が合成可能であると期待された。実験の結果、カーボナート前駆体であるエポキシ樹脂を合成した段階で、3官能性のエポキシ樹脂に加えて2官能性やオリゴマー系のエポキシドが混在していることが明らかとなった。そこで、まずはシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより3官能性エポキシ樹脂のみを単離精製して、それを用いて3官能性カーボナート樹脂の合成を試みた。その結果、理想的な3官能性カーボナート樹脂を合成することに成功した。生成物が3官能性カーボナート樹脂であることはNMRスペクトル測定およびIRスペクトル測定により確認済みである。現在、その硬化反応と硬化物物性の検討を進めているが、硬化剤としてヘキサメチレンジアミンやペンタメチレンジアミンなどを用いた場合には固体状の樹脂と硬化剤を十分に混合することが困難でまだ均質な樹脂硬化物を調製できていない。一方、より分子量が大きく柔軟な骨格を持つ硬化剤である4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン(TODA)を用いた場合には均質な樹脂硬化物が得られることを見出し、硬化物物性の検討が行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、チラミンをベースとした3官能性カーボナート樹脂に対して、4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン(TODA)以外のジアミン系硬化剤を用いて均質な樹脂硬化物を合成する方法の検討を行い、得られた樹脂硬化物の物性を詳細に調査する。特に、ジアミン系硬化剤としてイソホロンジアミンや芳香族系のm-キシレンジアミン、2環式の4,4′-メチレン-ビス(シクロヘキシルアミン)、より高分子量の硬化剤ポリオキシプロピレンジアミンなどを用いて検討を行う予定である。また、これまでは3官能性カーボナートを合成するために前駆体である3官能性エポキシ樹脂をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離精製していたが、工業的にはこの手法は利用できないので、未精製のエポキシ樹脂を直接用いてカーボナート樹脂を合成する方法の検討と、その場合にどのような樹脂が得られ、その硬化物の物性がどのようになるのかを詳細に検討し、当該カーボナート樹脂の工業的な有用性を明らかにする予定である。さらに、バイオベースのカーボナート樹脂合成の出発原料として、チラミンに替えて比較的安価に入手可能なポリフェノールとして知られるレスベラトロールを用いてカーボナート樹脂を合成するとともに、その硬化反応と生成硬化物の物性検討を行う予定である。
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Research Products
(2 results)