2022 Fiscal Year Research-status Report
ポリロタキサンの相構造制御による強靭かつ高耐熱な低誘電材料の開発
Project/Area Number |
21K05191
|
Research Institution | Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大塚 恵子 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究フェロー (50416286)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡瀬 星児 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究部長 (60416336)
中村 優志 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究員 (70783322)
伊藤 盛通 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主任研究員 (50712931)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ポリロタキサン / ネットワークポリマー / 低誘電性 / 高耐熱性 / 強靭性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、低誘電構造を組み込んだ熱硬化性樹脂をポリロタキサンで変性した場合のポリロタキサンの構造や硬化条件と物性との関係を明らかにすることで、強靭かつ高耐熱な低誘電材料を開発することを目的とする。 本年度は、低誘電かつ高耐熱性を示すマレイミド樹脂の探索を行った。一般に、分極構造を有する動きやすい分子で構成された材料は誘電特性が悪化することから、低誘電性を示す材料設計には、分子の分極率が小さく、分子運動性の小さい構造が必要とされる。低誘電性を示す構造として、主鎖骨格を剛直にすることで分子の運動性を減らす目的で、ビフェニル骨格をマレイミド樹脂に導入した場合、10GHzにおける誘電率2.9、誘電正接0.006、ガラス転移温度217℃を示した。主鎖骨格に低極性である長鎖脂肪構造を導入した場合には、10GHzにおける誘電率3.0、誘電正接0.007、ガラス転移温度200℃を示した。一方、側鎖に長鎖脂肪構造を導入した場合には、低誘電性を示すものの目標とする200℃以上のガラス転移温度を示すには至らなかった。 低誘電かつ高耐熱性を示すマレイミド樹脂の靭性向上のための改質ポリマーとしてポリロタキサンを用いた。ポリロタキサンは、軸高分子がポリエチレングリコール、環状高分子がポリカプロラクトンをグラフトしたシクロデキストリンであり、その末端の水酸基の一部がシクロヘキシル基、またはメタクリル基であるものを用いた。主鎖にビフェニル骨格を有するマレイミド樹脂の場合、いずれのポリロタキサンとも相溶性が悪く硬化物を得ることができなかった。また、主鎖に長鎖脂肪構造を導入した場合には、未変性樹脂と比較して靭性の向上が認められたが、ガラス転移温度が低下した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高耐熱かつ低誘電性を示すマレイミド樹脂にポリロタキサンを配合するための配合条件や硬化条件の最適化に時間を要したため。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、主鎖に長鎖脂肪構造を有するマレイミド樹脂をベースとして、低誘電で高耐熱なマレイミド系ポリマーアロイを用いる。このポリマーアロイにポリロタキサンを配合した場合の誘電性や靭性、耐熱性に優れた硬化物物性を示す配合条件や硬化条件の最適化を行う。既に予備実験において、低誘電かつ高耐熱性を示すポリマーアロイを見出している。
|
Causes of Carryover |
研究の進捗が当初計画と異なり、論文発表を次年度に先送りしたために次年度使用額が生じた。次年度に当初計画の直接経費と合わせて、論文投稿と消耗品の購入に使用する。
|