2023 Fiscal Year Research-status Report
加熱延伸で誘起される逐次液晶相転移を活用したポリイミド膜の配向制御法確立
Project/Area Number |
21K05195
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石毛 亮平 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (20625264)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 全芳香族ポリイミド / 加熱延伸 / 液晶 / 逐次相転移 / 放射光X線散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの結果を基に,ポリアミド酸(PAA)前駆体が中間相を発現するための要件の解明を図った.これまで主に,ピロメリット酸と置換ベンジジン(TFDB)骨格からなる含フッ素全芳香族ポリイミドのPMDA-TFDBの前駆体PAAの加熱延伸過程を検討してきた.これとの比較としてビフタル酸骨格からなるsBPDA-TFDBの前駆体PAAの延伸を試みところ,延伸過程での顕著な配向挙動は観測されず,配向ポリイミド試料を得ることは出来なかった.sBPDA-TFDBの前駆体PAAは屈曲した異性体(3,4体,3,3’体)の分率が75%であり,屈曲した異性体(メタ体)の分率が50%のPMDA-TFDBの前駆体PAAに比べて高い.これが中間相の発現を阻害し,また屈曲形態がイミド化過程で固定化されることにより,焼成後の試料で顕著な配向が観測されなかったと考えられる.遠赤外分光法を実施したところ,このポリイミドのsBPDAのビフェニル部のねじれ(二面角)は固体中で100度前後であることが判明し,上記の考察を支持する結果を得た.さらにPDMA-TFDBの延伸配向試料をダイヤモンドアンビルセルに充填し,高圧下におけるhk0面間隔および配向変化を放射光・広角X線散乱(SR-WAXS)測定により追跡した.配向を維持したままhk0面間隔が収縮する様子が捉えられるとともに,結晶-非結晶の長周期に起因する散乱は圧力上昇とともに消失した.現在,SR-WAXSの結果について詳細な解析を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一部の実験で再現性が取れず,その原因究明に時間を要したため.
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Strategy for Future Research Activity |
小角X線散乱測定で観測された長周期構造について,物性の側面から検証する.具体的にはフィルム配向方向の熱拡散率測定を実施し,長周期構造と熱拡散率の相関を検討する.超高分子量ポリエチレンにおいては,結晶-非晶ラメラ構造の周期と,熱輸送の担い手であるフォノンの平均自由工程がほぼ同スケールであると報告されている.本研究で作製したポリイミド配向試料についても,同様の熱計測を行い,熱拡散率の観点から結晶-非結晶(液晶ガラス)界面の性質について議論する.
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Causes of Carryover |
研究に遅れが生じ,予定していた延伸機の作製ができなかったため余剰予算が生じた. 余剰予算は24年度に延伸試料作製に援用可能な加熱装置の購入代金,および熱物性測定に必要な熱電対等の購入代金に充てる予定である.
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