2022 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive molecular dynamics simulations to reproduce the whole processes of nucleation and growth of organic semiconductor thin films
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21K05205
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
池田 進 東北大学, 材料科学高等研究所, 准教授 (20401234)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 有機半導体 / 分子動力学シミュレーション / 薄膜 / 核生成 / 結晶成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の2年目となった2022年度は、初年度に整備した分子動力学(MD)シミュレーションシステム(ハードウェア、ソフトウェア)、ならびにそれを用いて行った予察的シミュレーション結果を基に、より詳細な条件でのMDシミュレーションを実施した。具体的には、表面を疎水性官能基で修飾したアモルファスシリカ基板上における有機半導体ペンタセン分子の寝た状態から立った状態への分子再配向過程を様々な温度条件のシミュレーションで確認し、メカニズム解明に注力した(棒状有機半導体分子は孤立している状況において基板表面に寝て吸着するが、成長後の薄膜中では立っているという普遍的な現象があり、寝た状態から立った状態への分子再配向をシミュレーションで再現し理解することが、本研究課題の最終目標である核生成・薄膜成長全過程包括シミュレーションを達成するための鍵になると考えられる)。初年度の予察的シミュレーションにおいて、立った分子からなるクラスターを予め初期構造モデル中に配置すると、周囲の寝た分子や分子クラスターが再配向して立つ場合があるという結果が得られていたため、同様の初期構造モデルを出発点とし、245 Kから520 Kという幅広い温度範囲(25 Kきざみ)でシミュレーションを行い、再配向現象を考察した。シミュレーション結果の動画より、既に立っている分子クラスター近傍の寝た分子クラスターが一気に立ち上がる様子が再現性良く確認されたが、熱的、速度論的な考察から、高分子の再配向で見られる協同運動とは異なり、1分子が立つ際のエネルギー障壁程度のトリガ(立った分子クラスターと寝た分子・分子クラスターの間のエネルギー的相互作用)によって、複数分子からなるクラスターであっても同期現象的に立ち上がることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度整備したMDシミュレーションシステムを用い予察的に得られた知見を踏まえ、2年目となった2022年度において、本研究課題達成の鍵となる分子再配向のシミュレーションによる再現とメカニズムの解明を進め、成果を国内学会で発表するとともに、査読付き国際誌に論文として発表した。これは当初の計画通りであり、研究がおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
過去2年間のMDシミュレーションによって、基板表面に寝て吸着していた分子が立ち上がる過程を(立った分子クラスターが共存する条件下において)再現できるようになり、そのメカニズムの理解が進んだことを踏まえ、3年目においては、本研究課題の最終目標となる核生成・薄膜成長全過程包括シミュレーションの実現に向けて研究を進める。立った分子からなるクラスターが引き続き供給される分子を取り込んで薄膜成長が進む過程に関しては過去の研究において一部成功しており、壁となるのは、立った分子からなる核生成の初期段階であると予想される。これまでに得られた結果は、立った分子からなるクラスターが予め近傍に存在した場合に、それがトリガの働きをして周囲の寝た分子や分子クラスターが立つというものであり、最初の立った分子クラスター出現をシミュレートすることには成功していない。10分子以上の立ったペンタセン分子からなるクラスターが出現すると、それ以降は供給される分子を取り込んで安定的に成長できることをこれまでに明らかにしているが、この「最初の立った分子クラスターの出現」は恐らく確率論的現象であり、本来であれば、マイクロメートルオーター、マイクロ~ミリ秒オーダーの大きな空間・時間スケールの中で追跡していくべきものであると考えられる。現在使用しているMDシミュレーションシステムでは、そのような大きさの空間・時間スケールを扱うことは困難であり、物理的な意味を失うことなく計算を効率化できる技術的手段を検討するなどして、この問題を解決していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の状況を鑑み出張を差し控えたことなどから、実際の使用額が当初使用予定額をいくらか下回ったが、予算総額に対する割合は小さなものであり、次年度の研究活動にて有効に活用していく。
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Research Products
(2 results)