2023 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive molecular dynamics simulations to reproduce the whole processes of nucleation and growth of organic semiconductor thin films
Project/Area Number |
21K05205
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
池田 進 東北大学, 材料科学高等研究所, 准教授 (20401234)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 有機半導体 / 分子動力学シミュレーション / 薄膜 / 核生成 / 結晶成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の3年目となった2023年度は、過去2年間に整備した分子動力学(MD)シミュレーションシステム、ならびにそれを用いて行ったシミュレーション結果を活用し、有機半導体の核生成・薄膜成長全過程包括シミュレーションを試みた。具体的には、疎水性官能基で修飾したアモルファスシリカ基板モデルの表面上における有機半導体ペンタセン分子の吸着、拡散、クラスタリング、寝た状態から立った状態への分子再配向、薄膜成長等の各素過程に関するシミュレーションを昨年度までに実施してきたが、それらの各過程をシームレスにつないだシミュレーション技術の構築を目指した。基板表面に吸着した孤立分子が自ら立ち上がることはなく、近隣に立った分子クラスターがある場合に、その影響によって寝ている分子や分子クラスターが立ち上がりやすくなることを過去のシミュレーションで明らかにしてきたが、最初の立った分子からなるクラスターを自発的に生成させるシミュレーションの成功には至らず、立った分子クラスターを基板上に人為的に配置し、その周辺に新たな分子を堆積させ、立った分子からなるクラスターの体積比を徐々に高めつつ、薄膜成長させていくのが、現時点においては有効な手段であるという結論に至った。立った分子クラスターの自発的出現は確率が関係した問題であり、現在のMDシミュレーションシステムで処理可能な時間的・空間的スケールでは不足している可能性も大きい。単純に時間・空間の問題であるのか、あるいは、寝た分子が立つ分子再配向過程の中に、まだ未発見の物理が潜んでいるのか、それを明らかにしていくことを今後の課題としたい。
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