2023 Fiscal Year Annual Research Report
Neuromorphic device with an memristor array using diarylethenes
Project/Area Number |
21K05214
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
辻岡 強 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (30346225)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 金属蒸着選択性 / ニューロモルフィック / クロスバー構造 / ジアリールエテン / 表面ガラス転移点 / ナノマランゴニ効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のクロスバー構造のニューロモルフィック・メモリスターデバイスでは、金属電極の交差部分でジアリールエテン層にキャリア注入を行って異性化反応を誘起する必要がある。キャリア注入を効率的に行うには、ジアリールエテン層と金属電極の間に薄いキャリア注入層を設けることが一般的であるが、このような薄い層を介した金属蒸着選択性の実現性は明らかではなかった。そこで今年度はジアリールエテン表面に異種の有機膜を数nmレベルで蒸着した際の表面の研究を行ったが、その際に本研究代表者が「ナノマランゴニ効果」と名付けた新しい現象を発見した。 有機膜表面のガラス転移点TgはバルクのTgと比べて低いことはよく知られている。特定条件下の有機膜では、バルクTgが100℃程度であっても表面Tgは室温以下になりうる。この表面に異種の分子を微量蒸着すると、表面でマイグレーション・凝集を経て下地の有機分子と混合し、ナノスケールの表面張力の揺らぎが生じる。その結果ナノスケールの大きさと深さを有すr凹みが多数表面に生じる。「ナノマランゴニ効果」の研究では、この原因を明らかにし、さらにこの現象を用いて最表面からのTg分布を明らかにした。その結果、バルクTgと比べ、分子レベルの最表面Tgは100K程度低いことが判明した。またこのナノマランゴニ効果が生じやすいのは、エンタルピー回復した有機膜であることも示した。 研究期間全体としては、Mgを用いた多層クラスバー電極構造の実現、エレクトロニクス分野で多用されるAgやCuに対する蒸着選択性のメカニズム解明、そしてナノマランゴニ効果の発見と表面Tg分布の解析という研究成果が得られた。当初計画のジアリールエテンメモリスター層を用いたニューロモルフィックデバイスの動作実証は達成できなかったが、ナノマランゴニ効果や光安定な巨大表面電位などの新現象を発見することができた。
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