2022 Fiscal Year Research-status Report
開殻性を帯びた近赤外有機材料の新機軸設計指針の確立と機能開拓
Project/Area Number |
21K05215
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
前田 壮志 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90507956)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近赤外 / 機能性色素 / ジラジカロイド / 中間開殻性 / 励起子相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,閉殻一重項と開殻一重項の中間的な状態にあるπ共役系分子を用いて,近赤外線(NIR)に関する技術革新に貢献する堅牢なNIR吸収有機材料を創製することを目的としている.2022年度までに,800 nmを超える領域に強い吸収を示すオキソカーボン骨格からなるポリメチン色素が中間開殻性をもつことを明らかにした.2023年度では,(i)多様な複素環を持つ当該色素の設計,合成および中間開殻性と(ii)複素環が固体物性に及ぼす効果について検討を進めた.
(i)アリール置換カルコゲノピリリウムと5員環オキソカーボン骨格からなるクロコナイン色素を新たに設計・合成した.単結晶X線構造解析から,アリール基は色素のπ共役系と同一平面に位置することが示された.それら色素の電子吸収はアルキル置換カルコゲノピリリウムに比べて著しく長波長化し,950-1100 nmに観測されたことから,アリール基は色素の電子物性に大きく影響することが明らかとなった.それら色素のNMR,ESR,SQUIDデバイスを用いた磁気測定の結果から,それらは閉殻一重項と開殻一重項の中間的な状態にあることが示された.また,開殻一重項状態の寄与は,カルコゲン元素の原子番号が大きくなるほど,高くなることが明らかとなった. (ii)さらなる構造の多様化と分子凝集構造の制御を企図して,長鎖アルキル置換カルコゲノフラビリウムを複素環成分にもつクロコナイン色素を合成した.それらは,カルコゲノピリリウムと同様に中間開殻性を示したが,開殻一重項状態の寄与は小さいことが明らかとなった.また,それらは固体状態で結晶-結晶相転移を引き起こし,長鎖アルキル基が分子充填に影響することが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では,閉殻一重項と開殻一重項の中間的な状態にある近赤外吸収π共役系分子に着目し,(1)中間開殻性分子の設計・合成,(2)物性評価と構造―物性相関の解明,(3)分子集積体の構築と常磁性体および有機半導体への展開,に関する研究を計画し,NIR吸収有機材料の設計指針を確立するとともに,それら材料の機能を開拓につなげる計画である.2年度目では,多様な近赤外吸収クロコナイン色素を合成し,構造と中間開殻性の相関や電子遷移エネルギーと中間開殻性の相関について知見が得られており,計画にある(1)と(2)に関して大きな進展が見られたと考えている.また,1000 nmを超える領域に強い吸収を示し,π軌道が大きく重なった結晶構造を与える分子の開発に成功しており,有機半導体への展開の足掛かりを得ている.さらに,結晶-結晶相転移を示す中間開殻性色素を開発した.このように計画(3)に向けた分子の基本骨格が見出されている. 以上のことから、当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2023年度では,研究計画の(2)物性評価と構造―物性相関の解明,(3)分子集積体の構築と常磁性体および有機半導体への展開,を中心に研究を実施する.研究全体をできるだけ前倒して実施し,残りの期間を系統的な研究総括に充てる計画である。
計画(2)について:近赤外吸収色素のコンフォメーション変化と中間開殻性の相関について検討する計画である. 計画(3)について:中間開殻性近赤外吸収色素を用いて電界効果トランジスタを作製して,半導体特性を評価する計画である.また,当該色素の相転移と磁化率の関連についても検討を進める計画である.
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Research Products
(11 results)