2021 Fiscal Year Research-status Report
光学活性複核型金属錯体による高次機能性共結晶の作成と構造解析
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21K05234
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
津野 孝 日本大学, 生産工学部, 教授 (00217358)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 錯体 / 光学活性 / 共結晶 / 複核 / X線解析 / 白金 / 円偏光発光 / DFT計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
白金(II)を中心核とする,複数の平面四配位型光学活性白金錯体の合成し,X線結晶構造解析による錯体の構造と立体化学と円偏光発光特性との相関性について検討した。何れの錯体は,400-500 nmの範囲に1ILCT (intra-ligand charge transfer) と 1MLCT (metal-to-ligand charge transfer)が混合した吸収帯を示すとともに,円二色性吸収スペクトルから,それらがCotton効果を示す吸収帯であることが確認された。固体状態で良好な発光特性を示した。更に,円偏光発光について調査した結果,二つの配位子中の不斉炭素上に置換する基が立体的にかさばるほど,錯体中の二つの配位子のナフタレン環の間で構築されるボウル角が増加し,それに伴い円偏光発光効率が上昇していくことを見出した。更にボウル角の増加は,発光波長を短波長側へシフトしていくことも確認された。平面四配位型光学活性白金錯体のX線結晶構造解析は,錯体間で複数のCH-π結合の形成が認められ,それらがボウル構造に寄与していることも確認した。同時に行ったDFTおよびTD-DFT計算は,錯体の構造と円偏光発光特性について実験結果を良好に指示しており,本申請研究の狙いの一つである,光学活性複核型金属錯体共結晶内で円偏光発光特性へ寄与できる特性を確認した。ボウル型の角度が増加に伴い,円発光特性が増加する知見はこれまで報告されておらず,本研究は極めて意義深い結果を提供したと言える。この研究内容については,ChemPubSocのオープンジャーナルであるChemistryOpenへ論文として公表した。更に,本論文重要性から編集委員より,ChemistryOpenのCover pictureおよびCover profileに採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白金と同族のパラジウム(II)またはニッケル(II)を中心核とする平面四配位型光学活性錯体の合成は既に達成している。配位子を同一とする,白金錯体とパラジウムまたはニッケル錯体の結晶の空間群はX線単結晶構造解析から一致し,更にそれらの結晶格子パラメーターについてもほぼ一致する知見も得ている。この様な結果は,続く多核型準ラセミ共結晶,多核準キラル共結晶を創製できることを示唆し,当該年度では,これら錯体との混合系から,多核型準ラセミ共結晶,多核準キラル共結晶を創製し,X線単結晶構造解析から構造を明確にしていく。多核型準ラセミ共結晶,多核準キラル共結晶は,白金錯体で認められた円偏光発光が,結晶内における錯体の配列によって,結晶面上で異なることが予想できる。従って,可能であれば共結晶中での円偏光発光特性について検討していく。 更に研究実績の概要で使用した配位子を用いた,亜鉛(II)およびホウ素(III)錯体についても既に合成し,これらの錯体の固体状態における特異的な円偏光発光特性を既に見出している。DFT計算はそれら発光特性を十分に指示する結果を示した。この研究は,論文として公表する予定である。 白金(II)中心とする,光学活性サレン型錯体についても合成しており,白金を取り囲むO-N-O-Nの二面角が平面からずれており,このずれにより円偏光発光を示す知見を既に得ており,この内容についても論文として公表する準備は整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り,光学活性単核型白金錯体の立体構造に基づく円偏光発光特性に関する多くの知見を得ている。更に亜鉛またはホウ素を中心核とする錯体も円偏光発光特性が認められており,配位子の更なるチューニングにより,より円偏光発光効率の高い錯体の合成と,それらを含む,多核型準ラセミ共結晶,多核準キラル共結晶を創製し,構造解析と共に円偏光発光特性を含めた物理化学特性について調査していく。 一方,多核金属をジョイントできる配位子を導入し,光学活性複核型錯体の創製を試みる。更に,光または熱応答可能な配位子を設計・合成し,それら配位子を利用した錯体を創製し,順次,多核型準ラセミ共結晶,多核準キラル共結晶の構造を明らかにし,外部刺激による,結晶のキロプティカル特性のON-OFF制御についても展開していく予定である。 研究の実績で述べた,ボウル角の増加に伴う円偏光発光特性は,用いる配位子がナフタレン環をベースとしているためオレンジ色系統の発光を示さなかったが,置換ベンゼン環を導入することにより,オレンジ以外の円偏光発光材料へ展開できるとともに,非対称光学活性配位子を導入した錯体の合成について試みる。 更に,本研究を遂行中,複数の不斉アルキル鎖を有する白金錯体が常温で液体として存在し,液体状態での円偏光発光特性を示すことが認められた。固体状態での円偏光発光物質については,本研究の物質も含め多く報告されているが,液体の円偏光発光物質についてはあまりない。従って,新奇な液体円偏光発光物質へ展開できることから,本錯体の創製についても行う。
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Causes of Carryover |
その他では,論文のオープンアクセス費として申請していたが,昨今の円安の影響で,この申請額内でのオープンアクセス費を賄うことが困難となったためである。次年度の予算と積算するすることにより,論文のオープンアクセス費とする。物品費では,購入する試薬・ガラス器材に若干の残金が生じた。次年度,前述した研究を推進することから,配位子合成試薬の購入に使用する。
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Research Products
(5 results)