2021 Fiscal Year Research-status Report
Hole-induced plasmonic photocatalyst electrode for near-infrared utilized solar hydrogen production
Project/Area Number |
21K05236
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
納谷 真一 近畿大学, 有害物質処理室, 技術職員 (20329113)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プラズモニック光電極 / 正孔誘起プラズモン共鳴 / ホットホール移動 / 光触媒による水の分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
正孔誘起プラズモニック材料である硫化銅(CuS)の特性を明らかにするため、化学浴析出法によるフッ素ドープ酸化スズ(FTO)透明導電性基板への担持を行った。得られたCuS/FTOの粉末X線回折(XRD)測定では、ヘキサゴナルのCuSに由来する回折パターンが見られた。透過型電子顕微鏡(TEM)観察では、15 nm程度のナノ粒子の集合体であることが分かった。拡散反射法で測定した紫外可視近赤外吸収スペクトルでは、CuSに特徴的な近赤外領域の強い吸収が見られた。興味深いことに、反応時間を延ばすとこのピークの大幅なブルーシフトが見られ、60分では、720 nmまでシフトすることが分かった。局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による吸収は、集団振動しているキャリアの密度に依存して、そのピーク位置がシフトする。そして、CuSは、CuとSの比率が1:1からずれることで、キャリアであるホールが発生している。そこで、X線光電子分光法(XPS)測定によりCuとSの比率を求めたところ、反応時間とともにCuの割合が低下し、ホール密度が増加していることが明らかとなった。さらに、CuS/FTOを電気化学的に還元し、ホール密度を減少させたところ、ピークのレッドシフトが見られた。以上の結果から、FTO基板に担持されたCuSナノ結晶集合体が示す720 nmの吸収ピークが、正孔誘起LSPRに起因することが明らかとなった。これは、これまでに報告例のない波長領域の吸収ピークである。 CuS/FTOを用いた光電気化学セルに、疑似太陽光に光学フィルターを用いて670 nm以上の光を照射したところ、還元電流が流れた。さらに、光電位測定では正のシフトが見られることから、正孔誘起LSPRの励起により、CuSからFTOへのホットホール注入が起こることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正孔誘起プラズモニック光電極の鍵材料である硫化銅(CuS)の合成条件による変化を検討し、基礎を固めると同時に、これまでに報告例のない領域まで吸収ピークをブルーシフトさせることが出来た。これは、光吸収により生成するホットキャリアのエネルギーを大きく増大することが出来ることを示しており、プラズモニック光電極の性能向上の大きな手掛かりとなる。さらに、p型担体であるNiO基板へのCuS担持も検討しており、大幅な光電流増大も達成している。おおむね期待通り進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
高性能な正孔誘起プラズモニック光電極達成のためには、基板であるNiOの状態に加え、CuS-NiOの間の原子レベルでの接合状態が重要になる。高分解能TEMや電子線回折を用いた詳細な解析や合成法の検討により、良好な接合を持つ電極の合成法を開発する。さらに、これを用いた光電気化学セルを作製し、疑似太陽光を用いた水素生成を検討していく。
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Causes of Carryover |
触媒電極の作製や光電気化学測定が期待通りスムーズに進んだため、試薬等の購入が抑えられた。さらに、光反応に使用するランプなどの消耗品が本年度中は交換せずに使用できたため、次年度使用額とした。次年度は、次年度使用額を加えた助成金を使用し、さらに研究を加速する。
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