2023 Fiscal Year Research-status Report
Novel nano composite anode for efficiency improvement of direct ammonia fuel cell
Project/Area Number |
21K05237
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
井野川 人姿 崇城大学, 工学部, 准教授 (00647232)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ナノマテリアル / 金属ナノ粒子 / 多孔体 / 複合体 / 層状複水酸化物 / 電極 / 導電体 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニッケル(Ni)と鉄(Fe)を主成分とする層状複水酸化物の層間に、クエン酸銅イオンを前駆体とする金属銅ナノ粒子や、テトラクロロ白金酸イオンを前駆体とする白金ナノ粒子を形成することに成功し、比表面積が100 m2/gを超える多孔質な複合体を作製することに成功した。得られた金属ナノ粒子は、直径2-3 nm程度であることが分かった。層状複水酸化物を構成するニッケルと鉄の比率について検討したところ、金属銅ナノ粒子を形成するためにはNi/Fe比が一般的な2のものよりも、10~15等の鉄比率が低いものが好ましいことが分かった。白金ナノ粒子を形成する場合には、Ni/Fe比の影響は小さく、Ni/Fe=2の場合でも、Ni/Fe=15の場合でも、同様の微小な白金ナノ粒子が高分散した形で得られることが分かった。 得られた多孔質複合体について室温(25℃)、湿度90%以上の雰囲気において、二端子法により直流および交流での電気伝導度を測定した。その結果、金属銅ナノ粒子を複合した層状複水酸化物と、白金ナノ粒子を複合した層状複水酸化物の両方において電気伝導度が1x10^(-6)S/cmを超えることが分かった。金属銅においては大気中で取り扱うことで酸化するため、時間の経過と共に電気特性が変化することが分かった。白金ナノ粒子を複合した層状複水酸化物については、Ni/Fe比の違いがイオン伝導特性に及ぼす影響が見られたが、電子伝導特性に及ぼす影響は限定的であることが分かった。白金ナノ粒子と層状複水酸化物の複合体は1x10^(-6) S/cmを超える電子伝導性を示したことから、半導体的な特性を有するナノスケールの多孔質複合体を作製することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で提案した材料の合成と構造評価や電気伝導度評価に関する研究は、おおむね順調といえる進捗が得られた。しかし、当初の研究計画にて予定していた「アンモニア供給時における発電特性評価」を2023年度に実施することができなかった。腐食性と毒性を有するアンモニアを供給しながら、起電力の測定や排出ガスの分析を可能とする組み立て式燃料電池評価ユニットの作製を請け負う企業が見つからなかったためである。該当の評価ユニットの作製を相談したいくつかの会社のうちの1社から、2023年度の10月頃に前向きな返答があり、そこから仕様に関する打合せを開始した。本研究で合成した材料を電極として評価に用いることや、アンモニアの漏出を防ぐ構造など、仕様の決定と納期に長い時間を要し、納品されたのが2024年3月中旬となった。以上から、本研究を完遂するために、1年間の期間延長が必要であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
陰イオン交換樹脂のフィルムを電解質として用い、その両側に白金ナノ粒子を複合したニッケル鉄系層状複水酸化物多孔体(本研究で開発する材料)を塗布したステンレス製メッシュ(負極、燃料極)と、正極となるステンレスメッシュを取り付け、燃料電池ユニットを組み立てる。負極側にアンモニアを、正極側に水酸化カリウム水溶液をそれぞれ供給し、本研究にて作製した材料の電極特性を評価する。電極特性の評価項目として、起電力の測定と、電極反応により生成する窒素の定量分析を実施する。層状複水酸化物のNi/Fe比や白金ナノ粒子の導入量が電極特性に及ぼす影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況にて述べた通り、アンモニア供給時における電極特性の評価のため、研究期間を1年間延長する。組み立て式燃料電池ユニットにアンモニアを供給するためのガス配管の組み立てや、各種測定装置との連携のために必要な物品の購入に予算を使用する。また、本研究の主対象である「金属ナノ粒子と層状複水酸化物の多孔質複合体」について、組成を変えた様々なバリエーションの材料を合成するために、試薬や器具等の消耗品を購入する。これまでに得られた成果を学会で発表するため、旅費や学会参加費として予算を使用する。
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