2022 Fiscal Year Research-status Report
イオン伝導経路を電気化学的に形成する全固体電池用電極材料の探索
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21K05243
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
猪石 篤 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (10713448)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | その場形成固体電解質 / 塩化マグネシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、MgH2、Mg(BH4)2、ハロゲン化マグネシウムといったマグネシウム化合物を負極活物質とした全固体リチウムイオン電池において、電極合材中に固体電解質を含有させなくても充放電が可能な「固体電解質その場形成電極」となることを見出している。これらの活物質では、リチウムイオンを挿入することによって生成するLiHやLiBH4、LiCl等の存在によりイオン伝導経路が電気化学的に形成される。また、それが充放電で可逆的に生成、消失する。特にLiHの場合は高いイオン伝導性は示さないにも関わらず優れた電気化学特性を示すことが分かっており、イオン伝導のみが重要な因子ではないと考えられる。本研究では種々の電極活物質に関して電解質のその場形成による充放電を比較検討することで、利用率やレート特性を向上させる要因を解明することを目的とする。本年度は、前年度に新たな負極として見出したMgCl2へのリチウム挿入脱離過程の酸化還元機構の解明を行った。Mg K吸収端領域およびCl K吸収端領域のXAFSを測定し、MgCl2からMgとLiClが生成し、またそれが可逆的に戻ることが明らかとなった。また、各種の「固体電解質その場形成電極」を比較する中で、イオン伝導性よりも電子伝導性が電池特性に大きな影響を及ぼすことが示唆された。また、電池ペレットを切断し、その断面をXPSによって評価し、リチウムイオンがどのように分布しているかについても分析を開始し、評価できる目途がたった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種々の電極材料で固体電解質その場形成が実現できることが分かってきており、同時に電池特性にも違いがみられている。固体電解質その場形成メカニズムの理解に向けて必要となる材料がそろってきた状況にある。また、XPSによる断面分析も開始し、電極層内のリチウム分布を評価する目途がたった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに見出した電極材料を用いて、XPS、XAS、TEM-EELSによる固体電解質の生成・消失過程を明らかにする。
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Causes of Carryover |
物品費を既存の物で代用できたため、今年度の使用額は減少した。
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