2021 Fiscal Year Research-status Report
貴金属表面への電解処理に基づく高活性なグリセリン酸化電極の作製
Project/Area Number |
21K05247
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Research Institution | Osaka Prefecture University College of Technology |
Principal Investigator |
野田 達夫 大阪府立大学工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90723479)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 貴金属めっき / グリセリン燃料電池 / 電解処理 / 電気化学測定 / 修飾電極 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度得られた成果をまとめると以下の通りである. 1.グリセリン電解酸化生成物に着目し,グリセリン,グリセルアルデヒド,グリセリン酸を含む電解液中での電解処理効果を比較したところ,グリセリン酸を含む電解液中で電解処理を施したパラジウムめっき電極が最も大きなグリセリン酸化活性を示した.カルボキシ基の存在に着目し,グリセリン酸,タルトロン酸,シュウ酸で同様の比較を行ったところ,シュウ酸を含む場合に最も高い電解処理効果が得られた.シュウ酸では,ニッケルを触媒とした酸化電流を確認することができなかったため,シュウ酸の酸化生成物ではなく,シュウ酸そのものが電解処理効果をもたらしている可能性がある. 2.シュウ酸を含む電解液中で電解処理を施したパラジウムめっき電極を用い,0 V(vs. Hg|HgO)におけるグリセリンの定電位電解を行ったところ,300秒間にわたって酸化電流の値を維持することが可能であり,電解処理の効果が一時的なものではないことが明らかとなった. 3.グリセリンを含む電解液中で電解処理を施したパラジウムめっき電極の表面を赤外全反射測定法(ATR法)による測定を行ったところ,ヒドロキシ基やカルボニル基の存在が確認され,電解処理により得られた生成物が,電極表面上へと吸着することにより,グリセリン酸化活性の向上に寄与する可能性が示唆された. 4.電解処理において,下地のニッケル電極が触媒として作用する+0.6 V(vs. Hg|HgO)以上の電位を印加することが必要であるが,+0.6 V(vs. Hg|HgO)での定電位電解ではなく,-0.6~+0.6 V(vs. Hg|HgO)の範囲での電位掃引の方が有効であることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究実施計画として掲げていた電解処理方法の確立については,グリセリンではなくシュウ酸を含む電解液中での電解処理がより効果的であることを明らかにし,一定の成果が得られた.しかしながら,それらの成果を得ることに手間取ってしまい,並行して実施するはずであった新規設置機器の準備が,次年度送りとなってしまった.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に掲げた通り,電解処理による活性向上メカニズムの解明を目指す.電解処理後の電極表面について,走査型電子顕微鏡やX線光電分光法などでの観察を行うことで,パラジウムやニッケルの組織構造や分布に変化が見られていないか確認する.Niの溶出および析出が電解処理の効果をもたらしている可能性もあり,上記の表面観察に加えて,めっき金属と下地金属を逆転させたニッケルめっきパラジウム電極による検証を行う.また,電気化学インピーダンス測定が可能な機器を新たに設置し,電極と電解液間で起こる現象の解明を目指す. パラジウムめっき電極は,これまで無電解めっき法による作製を行ってきたが,再現性を得ることが困難であるといった技術的な課題が見られており,電位や電流制御によるめっき法について検討する.
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Causes of Carryover |
実施計画では新規設置機器の準備を予定していたが,他の実施項目の成果を得ることに手間取ってしまい,次年度送りとなってしまった. 次年度には新規設置機器の購入を行い,物品費等とあわせて,当該年度の予算額全てを計画的に執行する予定である.
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