2021 Fiscal Year Research-status Report
その場TEM観察による熱触媒法における炭素触媒の構造変化の解明
Project/Area Number |
21K05248
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
橋本 綾子 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 主任研究員 (30327689)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 透過型電子顕微鏡 / その場観察 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
化石燃料に頼らず、さらに二酸化炭素を発生しないクリーンな水素製造方法として、炭素触媒によるメタンの熱触媒法が注目されている。しかしながら、その研究の多くは触媒特性評価で、構造評価の報告例は少ない。本研究では、透過型電子顕微鏡(TEM)の利点である原子レベルの観察、電子線エネルギー損失分光法(EELS)による結合状態の分析を活用し、熱触媒法における炭素触媒の構造変化をその場観察により明らかにすることを目的とする。 今年度は、「炭素触媒の試料作製」および「その場TEM観察の検証」を行った。実際にTEM観察をする炭素触媒として、市販の各種カーボンブラック、活性炭、グラファイトなどを準備し、TEM観察用試料とした。試料作製中のコンタミネーションが懸念されたが、それを押さえた試料を準備できた。 TEMは電子線を用いるため、通常、観察環境は真空中、室温であり、メタンからの水素を生成させる熱触媒法の実働環境とは隔たりがある。そこで、その場観察には申請者らが開発したガス雰囲気加熱TEM試料ホルダーシステムを用いた。試料をTEM内に挿入する試料ホルダーに差動排気機構を取り付けることで、触媒環境の重要因子となる雰囲気と温度を制御できるようになっている。この試料ホルダーを用いたTEM内でのその場観察(圧力10Pa、温度1000℃まで)が、実際の触媒反応を模擬しているかを確認するため、真空チャンバーを用いて検証した。その際、加熱のために試料を乗せるヒーターチップが破損することがあった。ガス中での高温加熱によりヒーターメンブレンが弱くなった可能性があり、チャンバー内での作業工程を見直した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「その場TEM観察の検証」において、真空チャンバー内でヒーターメンブレンの破損が生じた。ガス中での高温加熱によりヒーターメンブレンが弱くなった可能性があり、チャンバー内での作業工程の見直しを行ったため、研究計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の「その場TEM観察の検証」で、ヒーターメンブレンの破損による研究の遅れが生じたため、2年目においてはまず、引き続き、真空チャンバーを用いた検証を行っていく。 その後、真空チャンバーでの結果を踏まえつつ、「炭素触媒のその場観察」を行っていく。ガス雰囲気加熱TEM試料ホルダーシステムを用いて、調整した炭素触媒試料をメタン中で加熱し、その場TEM観察を行い、触媒の構造変化を調べる。本試料ホルダーではガス圧力は最大20 Paまでしか上げられないが、比較的低圧力にすることで、反応速度を低くし、TEMに付属するCCDカメラで触媒の変化を捉えやすくする。その場観察には収差補正機構付きのTEMを用い、炭素触媒の挙動や構造変化を高分解能で観察し、結晶性、形態、形状を調べる。さらに、TEMに装備されたEELSを用いて、炭素の化学結合状態の解析も併せて行う。 触媒反応条件である加熱温度、炭素触媒の種類を変化させ、どのような炭素触媒、どのような箇所の構造が変化するのかに注目しながら、結果を比較する。これらを通し、どのように触媒特性に影響を与えるかを考察する。
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Causes of Carryover |
TEM装置利用料金として年度末に予算を確保していたが、ヒーターメンブレンの破損によりTEM観察が実施できないものがあったため、次年度使用額が発生した。引き続き、次年度に観察を行う。
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