2021 Fiscal Year Research-status Report
高電位正極材料酸化物の単結晶合成と全固体電池における電極-電解質界面の反応解析
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21K05249
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
秋本 順二 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 首席研究員 (20356348)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高電位正極 / 高容量正極 / 固溶体正極 / 単結晶合成 / フラックス法 / 単結晶X線構造解析 / リチウム電池 / 全固体電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
全固体電池への適用が期待されている高電位・高容量正極材料酸化物について、化学組成を厳密に制御した単結晶試料の合成技術を開拓することを目的として、フラックス法を適用して単結晶合成を試みた。 高電位正極材料酸化物であるスピネル型LiCoMnO4については、フラックス材として、塩化リチウムを使用し、最高温度750℃の合成条件で100ミクロンサイズの単結晶育成に成功した。SEM-EDX分析の結果、仕込み組成からMn/Co比が系統的にずれることが明らかとなったが、概ね組成制御は可能であった。単結晶X線構造解析の結果、有意の量のコバルトがリチウム席に置換していることが確認され、厳密な組成制御が困難であることが判明した。一方、フラックス材として水酸化リチウムを使用した場合は、600℃の合成で結晶サイズは数ミクロン程度と微細であったものの、ほぼ定比に近い単結晶粒子が合成できることを見出した。有機電解液を用いた充放電試験の結果、放電容量100 mAh//g程度の容量が得られることが確認された。本試料について、EPMA分析の結果、ほぼ定比の組成であることが確認された。 一方、高容量正極材料である固溶体正極Li1.2Ni0.2Mn0.6O2については、あらかじめ合成された多結晶体粉末を用いて、塩化リチウムをフラックス材とするフラックス法により単結晶合成を試みた。最高温度900℃の合成では、50ミクロン程度の単結晶が育成されたが、単結晶X線構造解析の結果、結晶構造はリチウム過剰系ではなく、単純な層状岩塩型構造となっていることが判明した。また、仕込み組成と比べて、含有するニッケル量が多くなっていることが明らかとなった。目的物ではなかったが、リチウムニッケルマンガン酸化物の単結晶合成の報告例はなく、詳細な結晶構造解析を実施し、構造精密化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高電位正極材料であるスピネル型LiCoMnO4については、微細ながらも良質な単結晶粒子が合成できており、2年目における全固体電池形成での正極部材作製に使用できる。単結晶X線回折測定が可能かどうかは不明であるが、まずは粉末X線回折測定などで電位制御が可能かどうかの検討を行うには十分な試料と考えられる。 一方、高容量正極については、リチウム過剰系正極の単結晶は合成できていないが、層状岩塩型構造のリチウムニッケルマンガン酸化物の単結晶合成に成功しているため、全固体電池の試作と電位制御の研究への展開が可能である。 スピネル型LiCoMnO4単結晶の大型化、および固溶体正極Li1.2Ni0.2Mn0.6O2単結晶育成については、引き続き継続して取り組みを進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目において、合成された単結晶試料を正極活物質とし、金属リチウムを負極とする全固体評価セルの作製に取り組む。種々の電位にて電位規制を行い、充電状態の異なる単結晶試料を作製すると共に、得られた単結晶について、単結晶X線回折法による結晶構造解析を行うと共に、SEM観察により表面形態変化について調べる。 前項にも記載したが、高電位正極材料であるスピネル型LiCoMnO4については、微細ながらも良質な単結晶粒子が合成できており、まずは粉末X線回折測定などで電位制御が可能かどうかの検討を進める。 一方、比較的大型の単結晶が合成できた層状岩塩型構造のリチウムニッケルマンガン酸化物について、全固体電池の試作と電位制御の研究を進める。
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Causes of Carryover |
3月までの人件費として確保していた予算が、2月、3月の人件費が不要となったため、残額が発生してしまった。翌年度に合成用のるつぼ等の購入費として使用する予定である。
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