2021 Fiscal Year Research-status Report
希土類元素導入ペロブスカイト系太陽電池の最適組成の理論的探索と導入効果の検証
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21K05261
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
鈴木 厚志 滋賀県立大学, 工学部, 講師 (30281603)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ペロブスカイト太陽電池 / 光起電力特性 / 希土類元素 / 第一原理計算 / 電子構造 / X線回折 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハロゲン化鉛系ペロブスカイト太陽電池を実用する上で、光活性層であるペロブスカイト結晶の劣化抑制、界面改善、電子構造制御による性能向上が求められている。 本研究は、希土類元素導入による長期安定性かつ高性能なペロブスカイト太陽電池の開発を行うことを目的とする。光活性層であるペロブスカイト結晶の材料設計と電子構造解析から特性を予測し、光起電力特性や表面形態、結晶構造解析から特性評価を行った。希土類元素 (Eu、Sm、Tb) の導入により光活性層の劣化を抑制しながら性能向上と長期安定化を行った。第一原理計算による材料設計と性能予測を行い、導入効果の実験的検証を行った。 Eu導入系では価電子帯、伝導帯付近のバンド構造の分散状態や部分状態密度分布上の各軌道の広がりからキャリア移動や電荷移動、短絡電流密度が改善し、変換効率が上昇することを予測した。Eu導入に伴い、光起電力特性(短絡電流密度、変換効率)が向上し、数か月間にわたる長期安定性が確認できた。Eu導入によりペロブスカイト結晶の結晶性や配向性および表面形態が改善し、性能や安定性が向上した。熱力学的考察から長期安定性を説明することができた。一方、他の希土類元素 (Sm、Tb) 導入系の場合、光起電力特性や変換効率は低下し、長期安定性を示さなった。希土類元素導入ペロブスカイト結晶の材料設計や性能予測により長期安定性かつ高性能なペロブスカイト太陽電池の開発が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
希土類元素を導入したMAPbI3ペロブスカイト太陽電池を作製し、光起電力特性、長期安定性、表面形態、結晶配向性などの特性評価を行い、導入効果を検証した。Euを導入したペロブスカイト太陽電池の光起電力特性を評価したところ、短絡電流密度、変換効率ともに上昇し、長期安定性を示した。ペロブスカイト層の結晶性や配向性がEu導入により改善した。第一原理計算によるペロブスカイト結晶の電子構造からEu導入効果を検証した。Eu原子の導入によりペロブスカイト結晶の価電子帯、伝導帯付近のバンド構造にEu原子のd, f軌道が寄与し、有効質量、キャリア移動が改善し、短絡電流密度、変換効率が向上することを予測した。熱力学的安定性を考慮しながら性能向上のための材料設計を行った。 一方、他の希土類元素(Sm、Tb)導入系の場合、光起電力特性の測定結果から短絡電流密度や変換効率の低下を確認した。経時変化とともに劣化を引き起こし、変換効率の低下を示した。第一原理計算から電子構造を解析したところ、Sm、Tbの d軌道が価電子帯、伝導帯付近に局在化し、キャリア移動が抑制され、短絡電流密度、変換効率の低下を引き起こすことが予想された。熱力学的解析から安定性の低下が予想された。実験から計算結果を検証し、実証することができた。他の希土類元素の導入効果についても同様に計算および実験に基づいて検証を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
<希土類元素導入系の材料設計と性能予測>蛍光性希土類元素 (Eu、Gd) を導入したMAGAPbX3、FACsPbX3、CsPbX3系ペロブスカイト結晶を設計する。電子構造、電子相関、格子振動、フォノン分散を考慮しながら性能予測を行う。希土類元素の酸化還元反応を利用してペロブスカイト結晶の劣化を抑制し、熱力学的安定性について検証する。
<光起電力特性>希土類元素 (Eu、Gd) を導入したMAGAPbX3、FACsPbX3、CsPbX3ペロブスカイト太陽電池の組成比や製膜条件などを最適化しながら作製する。光起電力特性 (JV特性)、外部量子効率 (EQE) から性能評価を行う。性能の経時変化から安定性について評価する。目標値は変換効率15%, 長期安定期間3か月以上とする。
<表面形態観察と表面分析評価、結晶構造解析>光学顕微鏡、SEM/EDX、STM/STS、顕微Ramanを用いてペロブスカイト薄膜の表面形態を評価し、希土類元素導入によるペロブスカイト結晶の不動態化効果について検証する。ペロブスカイト層の結晶性や配向性はX線回折を用いて評価する。変換効率の経時挙動や劣化過程から安定性を評価する。光活性層の表面形態学上の特性や組成分布から光起電力特性や耐久性に及ぼす要因を明らかにする。
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