2023 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation of determining factor on electrochemical stabilities of lithium and sodium metal battery electrolytes
Project/Area Number |
21K05263
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
万代 俊彦 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究センター, 主任研究員 (20810592)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 蓄電池 / 電解液 / アルカリ金属 / 還元安定性 / アート錯体 / 立体構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、リチウムやナトリウムなど還元力が強いアルカリ金属負極に対して(電気)化学的に安定かつ、耐酸化性にも優れる電解質の設計指針を確立することを目的としている。構造自由度が高く、物性制御が容易なホウ素系アート錯体アニオン[B(OR)4]を基本骨格とし、官能基の電子供与性や立体構造に基づき、アニオン構造-溶液特性-電気化学特性相関を系統的に評価した。当初はpKaの微調整が可能な置換フェノールをOR基として還元安定性の体系化を目指していたが、水素化ホウ素化物との反応生成物の多くが単離困難であったため、フッ素化アルコールを用いて、立体構造とpKaの観点から系統化を試みた。OR基について、OCH2CF3基(TFE), OCH(CF3)2基(HFIP), OC(CF3)3基(PFTB), OC(C6H5)(CF3)2基(HFPP)のように、β位における炭素分岐の数を変えた一連のアニオンを備えたリチウム塩およびナトリウム塩において、結晶構造解析の結果、分岐の数によって異なる会合状態の結晶が単離された。興味深いことに、嵩高いPFTBやHFPPを用いた場合には3置換体で反応が停止し、BHが残留した不飽和アート錯体が得られた。これらの塩を含む電解液の安定性を金属析出溶解効率および還元性金属に対する化学的な安定性に基づき評価すると、[B(HFIP)4]系が最も優れた特性を発現した。これは[B(TFE)4]が還元的に安定だとする量子科学計算からの予想に反しており、塩の会合性、すなわち立体構造が電気化学的安定性に多大な影響を与えていることを示唆するものである。耐酸化性の観点でも、多数のフッ素を導入した[B(HFIP)4]は耐酸化性に優れていた。 以上のことから、アート錯体系電解質塩の設計においては、適度な分岐構造とフッ素導入により解離性を制御することが重要な指針であることが分かった。
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