2021 Fiscal Year Research-status Report
転写・内在tRNAハイブリッド無細胞翻訳系を用いたアミノ酸入れ替え遺伝暗号の構築
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21K05270
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤野 公茂 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00772378)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 無細胞翻訳系 / tRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者が先行研究で提案したアミノ酸入れ替え(AS)遺伝暗号は、Ser, Leuコドンの交換により、普遍遺伝暗号との直交性を確立している。この系は、試験管内翻訳系により、危険な遺伝子を用いず研究対象のタンパク質のみを得る手段として有用である。しかし、AS遺伝暗号を持つ翻訳系は、タンパク質合成量が、通常の系の10分の1程度と低いという問題があった。これは、用いたtRNAが転写後修飾を持たず、必要最小限の21種類のtRNAしか用意していないことが原因であると考えられる。そこで、本研究では、『大腸菌抽出の内在tRNAと、試験管内転写tRNAを組み合わせることにより、翻訳合成活性の高いアミノ酸入れ替え遺伝暗号を構築すること』を目指した。 初年度である2021年は、まず、内在tRNAから、Ser, LeuのtRNAのみを選択的に除去する方法の確立を行った。変性PAGEを用いることで、tRNAを長さにより分離し、試験管内転写により合成した2種類のキメラtRNA^Ser, Leuを添加することで、内在・転写ハイブリッドtRNAの構築を試みた。ハイブリッドtRNAを用いた無細胞翻訳系により、SerまたはLeuコドンを含むモデルペプチドの翻訳を行い、MALDI-TOF-MSにより解析した結果、SerコドンにLeuが、LeuコドンにSerがそれぞれ入れ替わって導入されたことが分かった。このことから、内在・転写ハイブリッドtRNA用いたアミノ酸入れ替え遺伝暗号の構築が可能であることが示された。 さらに、モデルペプチドよりも長い配列を持ち、20種類全てのアミノ酸を含む、モデルタンパク質sfGFPのアミノ酸入れ替え翻訳合成も試みた。その結果、内在・転写ハイブリッドtRNA用いたsfGFPの翻訳は、高い合成効率で進行し、従来の試験管内転写tRNAのみで構築した系と比較して、その合成量は、約4倍に改善した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画は、次の4段階から成っている。(1) 内在・転写ハイブリッドtRNAの調製、(2) 内在・転写ハイブリッドtRNAを用いた無細胞翻訳系の構築、(3) 内在・転写tRNAハイブリッドAS-mini遺伝暗号の構築、(4) 内在・転写tRNAハイブリッドAS-full遺伝暗号の構築、である。 申請の段階では、初年度である2021年度に(1), (2)を行い、2022年度以降に (3), (4)を行うこととしていた。しかし、実際には、現段階(2022年5月)で、既に(1), (2), (3)までを達成しているため、「当初の計画以上に進展している」と判断した。 計画以上に進展した理由として、(1) 内在・転写ハイブリッドtRNAの調製、が短期間で終了したことが挙げられる。申請の段階では、変性PAGEにより、塩基長の長いSer, LeuのtRNA(及び本来除く必要の無いTryのtRNA)を分離し、除く方法を検討中であった。変性PAGEを、tRNAの除去を目的に使用した例はなく、この手法によるtRNAの除去が仮に困難だった場合、合成オリゴDNAの相補性を利用した単離など、他の実績はあるが効率の高くない手法への変更が必要であった。しかし、実際には、変性PAGEによるtRNAの除去は、本研究の実験設計に非常に有効であることが明らかになった。よって、(1)の段階を短期間で達成し、初年度である2021年中に、(2), (3)の段階まで進行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画は、次の4段階から成っている。(1) 内在・転写ハイブリッドtRNAの調製、(2) 内在・転写ハイブリッドtRNAを用いた無細胞翻訳系の構築、(3) 内在・転写tRNAハイブリッドAS-mini遺伝暗号の構築、(4) 内在・転写tRNAハイブリッドAS-full遺伝暗号の構築、である。 初年度である2021年度に(1), (2), (3)までを達成している。 そこで、今後は、(4) 内在・転写tRNAハイブリッドAS-full遺伝暗号の構築、を行う。これまでに構築した内在・転写tRNAハイブリッド無細胞翻訳系は、SerとLeuに対応する最小限の2種類の試験管内転写tRNAと、内在tRNAを合わせて構築したものであった。これにより、従来の試験管内転写tRNAのみからなる遺伝暗号では、64個のコドンのうち36個しか使えなかったのに対し、54個が使用可能になった。しかし、SerとLeuに対応するtRNAは、それぞれ4, 5種類ずつあり、現状では、このうちの1種類ずつを用意しているに過ぎない。XXAのコドンに対応するtRNAは、アンチコドンに塩基修飾を持つため本系では用意できないが、それ以外を全て用意することで、最大で利用可能なコドンは61個まで拡大できる。利用可能なコドンが増えることで、タンパク質をコードするmRNAの使用コドンの最適化が可能になり、タンパク質の合成量のさらなる増加が期待できる。
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Research Products
(5 results)