2022 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the intracellular molecular mechanisms of iron trafficking in intestinal epithelial cells
Project/Area Number |
21K05281
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
澤井 仁美 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (50584851)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 鉄イオンの細胞内動態 / 鉄輸送タンパク質 / 鉄貯蔵タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内の「鉄」は、呼吸により取り込まれた酸素の運搬貯蔵・エネルギー生産・遺伝子などの重要物質の合成・毒素の分解などに関与するため、必須の微量金属元素である。しかし、過剰に蓄積された鉄は活性酸素の発生源となるため、生体内の鉄濃度は厳密に制御されている。ヒトなどのほ乳類には、制御可能な鉄の排出経路がないため、鉄の吸収調節が生体内鉄濃度の維持に最も重要なステップとなる。通常、ヒトは十二指腸(小腸上部)の柔毛を形成する粘膜上皮細胞で鉄を吸収することが唯一の鉄獲得手段となっている。この細胞に取り込まれた鉄イオンは、細胞内鉄輸送タンパク質PCBPに結合し、鉄貯蔵タンパク質フェリチンへと運ばれるか、毛細血管側に放出されて血清タンパク質に結合し血流にのって全身を巡る。このようにして、様々なタンパク質を仲介することにより反応性の高い二価鉄イオンが細胞内を安全に輸送される。これらのタンパク質の機能不全により鉄代謝のバランスが崩れると、鉄欠乏あるいは鉄過剰となり生命維持に危険をもたらすことが知られている。しかし、腸管上皮細胞内に取り込まれた鉄イオンが安全かつ効率よく輸送されるメカニズムは分子論的な理解が進んでおらず不明な点が多く残されている。 本研究ではPCBPを中心に細胞内鉄輸送の分子機序の解明を目指している。令和4年度はヒト由来PCBPの組換えタンパク質を用いて、鉄イオンの結合特性の検討や鉄イオンの結合に伴う立体構造変化を解明することを目標として研究を進め、鉄イオンの結合解離に伴うタンパク質の会合状態の変化を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和4年度の目標としていた細胞内鉄輸送タンパク質PCBPにおける鉄イオンの結合様式ならびに鉄イオンの結合に伴う立体構造変化を行うことができた。さらに、Mass photometry法により、PCBPと鉄貯蔵タンパク質フェリチンとの相互作用についても検討できた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、細胞内の鉄輸送タンパク質PCBPと鉄貯蔵タンパク質フェリチンの複合体化の条件が明らかになりつつある。最終年度はさらに詳細なメカニズムを解明するために、これらのタンパク質の複合体についてX線小角散乱(SAXS)による複合体の形状解析ならびにクライオ電子顕微鏡による単粒子解析を行い、PCBPからフェリチンへの鉄イオンの授受のメカニズムについて検討していく。
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