2021 Fiscal Year Research-status Report
Calorimetric evaluation of the irreversible nucleation process from the reversible oligomers of denatured proteins and its application
Project/Area Number |
21K05288
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
城所 俊一 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (80195320)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 示差走査熱量測定 / 反応エンタルピー / アミロイド繊維 / 会合核依存的伸長モデル / 速度定数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、年次計画に従って、主に(1)すでに高温での可逆的オリゴマー形成(RO)がアミロイド形成の前駆体であることが報告されているPSD95シナプス足場蛋白質のPDZドメイン3(PDZ3)の野生型とRO状態を不安定化したアミノ酸置換体F340Aとを用いて、DSCにより、降温走査とそれに続く昇温走査の差から、RO形成から会合核形成への不可逆的反応に伴う熱の測定を行うとともに、(2)PDZ3のRO状態の安定性を更に変化させる数種類のアミノ酸置換体の作成とDSCによる評価および、低温ショック蛋白質の変性構造に影響を与えるアミノ酸置換体の作成とDSCによる評価および天然状態でのDNAとの結合性の評価とを行った。(1)では、これまで報告されていなかった、天然状態とRO状態の平衡反応にDSCの走査速度依存性が存在することが明確になり、当初想定していた反応よりも複雑な反応系であることがわかった。このため、今後は以下を検討することとした。まず可逆反応の速度論的効果を明確にした後に、不可逆反応の評価を行う。これと平行して測定のpHを変化させることで解離・会合反応の速度定数の変化を評価し、より緩和速度の速い実験条件を探索することとした。(2)では、PDZ3ではいくつかのアミノ酸置換によりRO状態の安定化・不安定化が制御可能となり、アミロイド形成反応との相関も明確になった。また低温ショックタンパク質では、3本の分子内ジスルフィド結合を導入することで、天然構造には大きな変化を与えずに変性状態の不安定化に成功するとともに、RO状態の形成を示唆する実験データを得た。変異体蛋白質の精製条件を検討するとともに本アミノ酸置換体によるRO形成について研究を継続することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のように本年度に計画していた(1)と(2)について、計画通りに実験を実施した。この結果(1)では、これまで報告されてこなかった、可逆反応についての速度論的効果を明確にすることができた。これによって、まだ未知な可逆的オリゴマー形成反応の速度定数やその温度依存性を今後明らかにできる可能性がある。また(2)では蛋白質にジスルフィド結合を導入して変性状態の分子鎖の自由度を下げることでRO状態を安定化することを示唆しており、大変興味深い知見が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、(1)と(2)の研究については、より詳細な研究が必要となったためこれらを次年度も継続して実施するとともに、次年度以降に予定していた(3)作成した変異体の熱測定による評価と(4)pH、塩濃度、糖濃度の速度定数等への影響の評価も平行して進める。特に(4)のpHの影響については、(1)で可逆反応の緩和速度を速めることに効果が期待できる。
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Causes of Carryover |
変異体作成作成についての消耗品の支出などが想定よりも少なくすんだため、次年度に繰り越し、新たに評価が必要となった立体構造解析用消耗品の購入などに充当する。
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