2021 Fiscal Year Research-status Report
クロマチン修飾を制御する新規細胞機能調節物質の探索と構造解析
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21K05289
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
太田 伸二 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (60185270)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生理活性物質 / 軟体サンゴ / 胚発生 / 海洋生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
アフリカやフィリピンなどで採集された海洋生物や植物、昆虫を有機溶媒で抽出した。胚発生阻害スクリーニングとして、それぞれの粗抽出物を段階的に希釈したのち、棘皮動物受精卵に添加して、時間経過とともに顕微鏡下で胚の初期発生に対する影響を観察した。この阻害スクリーニングの結果、2種の軟体サンゴの粗抽出物において棘皮動物の胚発生を特定の発生段階で選択的に阻害する活性を認めることができた。選択的阻害活性が認められた有望な検体の1つであるエジプト紅海産軟体サンゴの酢酸エチル抽出物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで、酢酸エチル-ヘキサンおよびメタノール-酢酸エチルの溶媒系でグラジエント溶出することにより、6種の画分を得た。フラクション-3をさらに酢酸エチル-ヘキサン系溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマト分画を行うことによって、3種のサブフラクションを得た。サブフラクション-3Aについて、さらに逆相HPLCによってメタノール-水系溶媒を用いて精製し、2種の化合物を単離した。サブフラクション-3Bをメタノール-水系溶媒の逆相HPLCによって精製することにより、1種の化合物を単離した。フラクション-4を酢酸エチル-ヘキサン系溶媒によるシリカゲルカラムクロマト分画を行うことによって、2種のサブフラクションが得られ、これらをメタノール-水系溶媒の逆相HPLCによって精製することにより、2種の化合物を単離した。これら5種の化合物は、HRMSならびに1D-, 2D-NMR解析によって、いずれも新規なセンブレン型のジテルペノイド類であることが明らかになった。これらは、いずれもその化学構造の特徴として、14員環構造とヒドロペルオキシ基を有していた。そのうちの1種は、ヒト肺胞基底上皮腺癌A549細胞等に対して細胞増殖阻害活性を示すことも明らかにした。海綿等からの活性成分についても構造解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
棘皮動物の胚発生阻害スクリーニングにより発生段階選択的阻害活性を示す海洋生物抽出物を選び出すことができた。それぞれの抽出物中に含まれる生理活性物質の分画・精製を進めており、それらの化学構造も順次明らかにできつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続いて、各種海洋生物および植物由来の抽出物や昆虫の代謝産物を対象にして、棘皮動物胚発生阻害スクリーニングを行なって活性物質を探索するとともに、これまでに得られた有望な活性物質について、さらに大量抽出を行なって単離しそれらの構造を決定する。単離できた生理活性物質の化学構造を部分的に化学修飾するなどして、どの箇所の部分構造が活性を発現する上で重要なのかを調べて、構造活性相関を明らかにするとともに、もっと簡単な構造でも強い活性を示す類縁体を探し出す。以上の知見を総合して、クロマチン修飾を制御する新規な細胞機能調節物質を開発するとともに、細胞膜透過性に優れた抗癌剤候補等有用な薬剤開発のためのリード化合物の開発を図る予定である。
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Causes of Carryover |
活性物質の分画・精製を進めていたが、いくつかの画分が空気中の酸素や温度等に不安定であることが判明し、精製のやり直し等が生じて実験予定の一部が次年度に持ち越しとなったため、予定していた精製に必要な試薬等の物品費および分析機器利用料等が次年度で使用することになった。使用計画として、前年度実施する予定であった生理活性物質の精製と構造解析に用いる溶媒・試薬・器具等の物品費および分析機器利用料を次年度に使用する計画である。
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Research Products
(8 results)